拾ってくれた神は?
前回は弁護士と連絡が取れなくなってしまったものの、何とか日程を確認できたところまでお話しました。
日程を確認して、すぐに教えてくれた弁護士A氏には、「とにかく次の日程を決めて、今後どうするか準備する時間を稼ぎなさい。」と言われていました。その上で、「一応、あなたの弁護士が来るかどうか、当日まで待ちなさい。クビにするなど、具体的なアクションは、『日程を連絡して、催促したにも関わらず、裁判所に現れなかった』事実があった後です。」というアドバイスも。3年ぶりのいきなりの電話なのにありがとう、A氏。感謝。
当日は、裁判所で実際に朝から夕方までいて、自分の目で私の弁護士が来なかった事実を確認しようと思い、朝の8時半に家を出た。
裁判所にもうすぐ着く、というところで数台の車にクラクションを鳴らされる。
緊張していてイマイチ機嫌の悪い私が「も~なんなの~??」と思っていると、「パンクしている」と隣を走る車からジェスチャーで知らされる。え~なんですと。裁判所について、駐車場に車を停めてみてみると、確かに前の右側のタイヤがぺっちゃんこ。。。
まだ、今日は始まったばかりだが、「泣き面にハチ」的な感じだろうか。。
私の弁護士には、前日も当日もメッセージし、電話もかけ、朝の9時半にはもう裁判所にいて待っている事を連絡して、反応があるか、または、現れるか待つ。正直な気持ちを言うと、もう信用して仕事を任せる気にはなれないし、むしろ仕返ししてやりたい気分なので、来なくてもいいのだが。
裁判所は複数の建物が敷地内にあり、その中のいくつかの部屋が裁判所になっており、それぞれに判事の控室、(多分だけど)事務方の人々の部屋や資料室がある。さらに建物の外に多くのの小さなカウンターやプレハブなどがあり、敷地内に部屋を持っている弁護士や、コピーサービス、小さな食堂(もちろんチャイ屋さんも)などがある。ちなみに免許センターも同じ敷地内にあり、運転試験会場は通りを挟んだ向こう側にある。なので、中々の広さだ。
毎回、調停の日になると裁判所の部屋の前に行き、その日のリストに自分の名前があることを確認し、名前を呼ばれるまで待つ。今回は、10時半ぐらいに名前を呼ばれたので、中に入り、出席と日程担当(?)の人に声をかける。そうすると、申立書を出してくれるので、署名して、日付を書き、裁判所に来たという記録を取る。
アドバイスされていた通り、「担当の弁護士に連絡が取れなくなってしまったので、次の日を設定してくれないか。」と言うと、とりあえず署名する様に言われ、申立書を渡されて、判事の前に一人で放り出される。心の準備ができていないのに、インドは色々と突然だ。
(・・・あ、判事が代わったんだ。前は女性の判事だったのに。)
40代半ばと思われる優しそうなその判事は「今日はどうしました?」と穏やかに聞く。
知識も何もない私は、アドバイス通り、「担当の弁護士に連絡が取れなくなってしまったので、次の日を設定していただけますでしょうか。」と、時間稼ぎをする作戦に出る。
判事:「それは大変。しかし、弁護士は必要ですか?」
私:「はい。単純な手続きなのかもしれませんが、私は外国人ですし、法律の知識もありません。やはり専門家のサポートが必要だと考えています。」
すると、判事は部屋の中にいた女性に声をかけると、女性は「光栄です。」と言い、申立書をもって私を部屋の隅に引っ張っていく。
よくわからないが、こうなればもう流れに乗るしかない。
女性に聞かれて、もう一度、弁護士に連絡が取れなくなってしまった事情を説明する。すると彼女は、「一緒に申立書を確認しましょう。」と言って、申立書のファイルを開き、一ページづつ確認しながら、所々私に質問していく。
このファイルは裁判所の保管用なので、申立書の提出から、今日までの記録も記載されている。もう3年になるとは言え、3か月に1回程度しか調停が無いので、更新記録はそれほど多くはない。だが、それを確認していくうちに、私の弁護士は嘘をつき、そのために私は2回も欠席になってしまっていることが判明した。さらに、初回の調停は、私は来ていたにも関わらず、署名が必要なことを教えなかったため、合計で3回の欠席になっている。なんという事だ。
さっきも言った様に、調停は約3か月に1回の頻度だ。2回欠席していたという事は、単純に考えても6カ月分の時間を無駄にしたことになる。
・・・許さん。
書類の確認をしているうちにお昼になってしまい、判事は部屋に入ってしまった。日程担当に書類の確認が終わったことを伝えると、「また10月に来て」とそっけない。
(10月なんて、また3か月後じゃないの!!)
事情を話して、必死にすがりつくも、「あ~ダメダメ。他の人は11月だから、あんたに一番早い日にしてあげてるんだし、弁護士が居ないと何もすすめられないから、帰った帰った!!」とにべもない。
協力してくれた女性や、書記官の女性たちに色々聞きまわり、お昼過ぎに判事を捕まえられないか、粘ることにした。どちらにしても今はもう13時過ぎなので、昼休みで裁判所は閉まる。私も一度休憩だ。
特に食べたいものも売っていなかったし、ゆっくり座りたいと思える環境ではないので、ビスケットだけ買って裁判所の前に戻る。調停の行方が心配で、お腹も空かないし、何もせず(できずに)過ごした。会社のメールをいくつか確認し、返信すると、みんなお昼に出ているのか、建物の中に残っている人もまばらになる。
結局、この時間になっても、私の弁護士は現れず、メッセージも既読にならない。分かっていたけど、がっかりだった。離婚なんて個人的なことを信用しなければ任せたりしない。それを、お金を受け取って、その上、嘘をついて、離婚の手続きにも問題が生じてたかもしれないのだ。弁護士と言う職業をどのように考えているのだろう。
責任感のない弁護士に腹も立つが、この弁護士の人柄を見抜けず仕事を任せてしまった自分にも腹が立つ。
この日、申立書の確認を手伝ってくれた女性は、昼休み開始前に「14時になったら、もう一回裁判所に来て。話ができないかやってみるから。」と言っていた。昼休み何も手につかなかった私は、5分ぐらい前から入口で彼女を待つ。
10分経っても彼女の姿が見えないので、メッセージしようと思ったら電話が鳴った。「まっすぐ中に入ってきて。」そう言われて、案内されたのは判事の控室の様だった。
判事とあの女性が座っていて、座るように示される。
女性は今回の経緯を説明し、私にサポートが必要であることを主張する。判事は思案顔である。「弁護士がいないと何も進められないんだが・・・しかし、同情はするしなあ。。」そこで、書記官の女性が呼ばれ、判事が本日の記録を取るように言う。今回の事は同情に値し、特別措置として、他の弁護士に担当させることを許可する、と言うものである。(そうでなければ、私の弁護士を捕まえて引っ張ってこなければならなかったそうだ。)
女性はこの案件を担当したい、と言ってくれたが、判事の指示により他の弁護士に担当させる事になった。彼女だったら心強かったのだが、仕方がない。それに、いづれにしても彼女はこの裁判所にいる。必要であれば遠慮なく力を借りよう。
今日の更新を申立書に記録し、次の日を決定すると、裁判所でできることは終わりだった。他の弁護士を探すのは自分の役目だ。今日はひとまず帰ろう。
裁判所を出たのは15時頃だったが、もう一つ大きな仕事が残っていた。そういえばタイヤがパンクしてたんだった。。。あ~。。。
しかし、駐車場券を渡しているおじさん、兄ちゃんたちにお願いすると、快くタイヤをスペアと交換してくれた。
インドは本当に不思議な国で、私の弁護士の様に明らかに悪意を持って近づいてくる人間もいれば、見ず知らずの人間なのにあっさり善意でタイヤ交換をやってくれる人間もいて、人生において良い事と悪い事は半々づつなんだな、と再認識させられる。大事なのは、失敗から学び、良い事に目を向けられるかどうかだ。
帰宅したら、新しい弁護士を探さなければならない。今日は火曜日だけど、リミットは次の月曜日だ。土日を除けば、もう数日しかない。急がねば。
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