
小説『水色の君』
小説「水色の君」
三月のパンタシア「透明色」原案小説
昼下がりの喫茶店で、アイスコーヒーの濃い色をひと口含んだ。
さっきシロップをひとつ注いだものの、ずくんと苦い。
白いストローから口を離すと、真っ黒な液体がするするとストローを下りグラスに戻っていく。私はコーヒーの苦みが表情にまで滲まないよう、意識して眉と眉の間をゆるめていた。
テーブルの向かいに座る君は、ソーダ水をストローでくるくるかき混ぜている。
ここの喫茶店のいちおしメニューであるソーダ水は、透んだシロップみたいな水色。
そのきらきらした水色を瞳に反映させ、君の目はビー玉みたいに光りゆらめいている。
「なんか、結構久々に来た感じするなぁ。ここ」
「そうだね」
古いというよりもレトロな風情のこの純喫茶は、私たちが高校生だった頃からよく通っていた。
会話が途切れて、私は気まずさから逃げるように視線を窓に移した。窓越しに見える空は、ツユ明けの眩しい太陽が顔を出している。
雲間からこぼれる気だるい光をぼんやり眺めていると、
「なんでコーヒー?」
君が言った。
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