
小説『バスとコスモス』
小説「バスとコスモス」
三月のパンタシア「ラフスケッチ」原案小説
「あの人の連絡先教えようか?」
渋谷駅に向かってふたりで歩く途中、友人がにやりとした顔で聞いてきた。
突然そんなことを言うから、えっと固い声がこぼれた。返事をしないままでいると、やっぱりにやにやと見つめてくるから、私はゆっくりとかぶりを振る。
「え、なんでよ!」
「いやだって……」
彼女が思い切り眉根を寄せるのに気づいて、私はビルとビルの間に落ちる秋の美しい夕日に視線を泳がせる。
「だって、今日会ったばっかだし、まだなにも知らないし……」
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