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小説『三月』

小説「三月」
三月のパンタシア「三月がずっと続けばいい」原案小説

 大学の授業を終え、バイト先に向かう道のりの途中。
 春風がふわりと髪を撫でた。
 目の前をひらりと白いはなびらが舞い、私の髪先に落ちる。
 突風に目を細めながら、私は首を傾け、そっと指先で花びらをつまんだ。

「わあ」

 傷ひとつないきれいな白い花びらだった。
 柔らかな日差しに透かしてみると、指先で淡く光る。
 その時、あ、と思い出したみたいに、胸の片隅がちりっと痛んだ。
 三月の桜を見ると、ふいに、まるではなびらみたいにひらりと目の前に現れる記憶がある。
 桜並木の道を歩きながら、私は脳裏に浮かぶ懐かしいその光景を深く見つめた。
 高校三年生、十八歳の私。
 あの頃言えなかった想い。
 そしていつだって胸を切なくさせた、あの人のこと。

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