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#82 Oliviaの同級生Gerard(ジェラルド)

しばらく王冠を眺めた後、
私達は大広間から広間に出た。

屋外の風はとても冷たく、
徐々に体が冷えていくのがわかった。

「随分寒くなってきたわね…
そろそろ帰りましょうか。」

Oliviaのかけてくれた
空気の膜を作る魔法だけでは
耐えられない寒さになりつつあった。

私達は、また氷の王国の祝祭の街を眺めながら
早足で扉へ向かい、Oliviaの街に戻った。

写真 2020-05-05 18 31 49

すっかり暗くなった街で
カフェに向かって歩いていると
カフェの前の広場で
Oliviaは誰かに気が付いた。

「あ、ちょっと…
カフェに急いで。

慌てて足を速めるOliviaが見ていた先からは
誰かがこちらに向かってきていた。

「やぁ。Oliviaじゃないか。」

背の高い細身の男性が
私達の行く先を阻むように立ち止まり
笑いかけた。

「あら。Gerard(ジェラルド)。どうも。」

Oliviaは、そっけない態度で挨拶をした。

Gerardは、真っ黒な髪をカールさせて
キチンとセットしている
とても清潔感のある青年だった。

少し面長の整った顔立ちの中でも
グレーの鋭い目がとても印象的だ。


「で?こちらのお嬢さんは?」

私が口を開くと同時にOliviaが早口で答えた。

「M.ちゃんよ。
私達、ちょっと急いでるの。

最近の行いを反省したOliviaが
少しでも早くカフェに戻ろうとしているのかと
私はOliviaを見た。


「おいおい、久しぶりなのに
あんまりじゃないか。
挨拶くらいさせてくれよ。
初めまして、M.ちゃん。」

Gerardは私に笑顔を向けて手を差し出した。

「初めまして。」
私もそれに応えて握手をした途端、
Oliviaが私の肘の辺りを強く引いて
握手した手を一瞬で引き離した。

Gerardはその様子を目の端で捉えて
フッと口角を上げた。

「M.ちゃんはアレか。
ここの世界の人じゃないんだね。」

「はい、そうです。」

「そうか。Olivia、また案内してるのか。」

Gerardはどこか嬉しそうだった。

「じゃぁ、私達は…」
と体の向きを変えたその時、
大きな黒い影が空からバサッと現れ
Gerardの肩に乗った。

「わぁっ!」

私は突然のそれに驚き少し屈んで、
恐る恐るその正体を見た。
Gerardの肩にいたのは、大きなカラスだった。


「こらこら、驚かせちゃったじゃないか。
ごめんよ。
こいつは僕のオオガラスのギャリーだよ。」

「オオガラス…」

オオガラスが返事をするように
カァ!と大きな声で鳴いた。

私はまた小さく驚いた。

「ふふ。M.ちゃんか…。
じゃ、Oliviaが僕たちを引き離したがってるみたいだから、
そろそろ行くよ。またね、M.ちゃん。」

そう言いながらGerardはカフェとは反対方向へ
体の向きを変えた。

私が返事をする前にOliviaが私の腕を引いて
早足でその場を離れた。


Gerardに声が聞こえないくらいまで離れた時
Oliviaが私にまるで警告するように言った。

「あなた、目を付けられたわね。」

「目を付けられた?どういうこと?」

「彼、あなたみたいな子が大好物なのよ。」

「え?私みたいな子?」

「あなたみたいな、闇の魔法をあまり知らない人。
Gerardは学生時代から闇の魔法にハマってるの。
闇の魔法を知らない子を
危ない道に引き込もうとするのよ。」

「え、そうなんだ…」

「まぁ、あなたは賢いけど
コッチの世界の危険を知らないでしょ。
だから、気を付けて。」


私達はカフェまで戻った。




これがOliviaの同級生Gerard(ジェラルド)
出会った時のおはなし。
続きはまた次回に。


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