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#68 海中守護の薬 60min.

「あ、ちょっと待って!
お嬢さん、もしかして、一人で行くのかい?」

鍵屋の店員に、そう呼び止められた。

「あ、はい。」

「お嬢さん、ここの人間じゃないよね?

「はい、そうですが…」

「どうやって深海で息するのか、
準備はしてますか?」


そこに関しては何も考えてなかった。
以前、凍てつく寒さの氷の王国へ行った時は
Oliviaの母のAlexが何か呪文をかけてくれた。

「あ…何も準備してないです…」

「だと思った!
お嬢さんくらいの歳で
初めて鍵を買うかのような様子じゃ、
きっと魔法使いじゃないなってね。
深海都市はそのままでは行けないですよ。」

「じゃぁ、どうすれば…?」

「大丈夫。こんな薬もあります。」

店員は店の奥の細かな仕切りがたくさんある棚から
小さな瓶を二つ持ってきた。

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指の先ほどの小さな瓶の中には
陽の差す海底のように
不思議に煌めく液体が入っていて
よく見ると水面が海面のように波打っていた。

瓶自体にも細かな模様の金具や
グラデーションが美しいパールが付いており、
巻き付いたチェーンには小さなストーンが揺れていた。


「えーと、確か…そう、海中守護の薬
この水色のは浅瀬用だったな。
こっちの青いのが深海用です。」

「なんだかとても綺麗ですね。
具体的にどういった効果のある薬なんですか?」

「深海の水圧に負けず、息もできるし…
とにかく、地上と同じように過ごせますよ。
あなたの持ち物なんかも全部ひっくるめて
空気の膜のようなものが護ってくれるイメージです。
戻ってきたときも、あなたもお洋服も乾いたまま。」

「なるほど!それはいいですね!」

「ただし!気を付けて。
ココに置いてるのはこのサイズ、緊急用のみ。
60分ほどしか効果がないんです。
余裕を持って帰って来れますか?」

「はい、そんなに長い時間はいないつもりなので
60分で大丈夫です。」

「よかった。では、この深海用で。」

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私は、ありがとうございます、と
その薬を受け取ってその場で薬を飲んだ。

数滴くらいしかないが、何かスーッと
冷えた水をコップ一杯飲んだような感覚があった。

そして、店のすぐ目の前の扉へ向かった。


私は街の扉に深海都市への鍵を挿して回した。

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扉を開けてみると
暗い海の底に街灯のようなモノが並び
その道の脇には建物が並んでいた。

遠くまでは見えないが
魚影がいくつかゆったりと泳いでいた。

街灯の灯りの近くしかハッキリと見えないが
無数の小さな何かが浮遊し、
まるで雪が舞っているようだった。

深海都市とこの街の境は
やはり海面のように波打っていた。


少し怖くなって
鍵屋の方を振り返ると
店員は私に笑いかけながら大きく頷いた。

私は恐る恐る手を入れてみた。
少しひんやりとしたが
確かに空気に包まれているような感覚で
手を引っ込めても濡れてはいなかった。


それを確認した私は
思い切って、一気に深海都市へと踏み入れた。




これが海中守護の薬を飲んだ時のおはなし。
続きはまた次回に。


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