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架空の葬送儀礼 02.『蝶を弔う』
年中蒸し暑く、雨の絶えないその土地には様々な虫が生息している。人々は虫を食べ、売り、身につけ、そして弔う。
正確に言うと、虫そのものを弔うのではなく、虫を人の弔いの形代とする。
虫の羽や外骨格で飾られた装いをきらびやかに纏う人々は、死してなお虫に彩られる。
この地の死者の身体は埋められるのでも燃やされるのでもなく、森にただ置かれる。湿度の高い屋外に全裸で放置された遺体はすぐに腐敗し、独特の臭いを放つ。
しかし、森にはこの臭いに惹かれてやってくる美しいものがいる。蝶である。その蝶の羽は金属のような眩しい光沢を持ち、見る角度によってその色を変える。彼らには腐肉を好んで食する性質がある。彼らは大群で死肉にむらがり、遺体を鮮やかに彩る。
これを待っていた遺族たちは、死者に集る蝶たちを捕らえ、持ち帰る。そして、持ち帰った蝶たちを特別な壺に入れ蓋をして祭壇に安置する。人々はこれに向かってまじないを唱え、頭を下げ、親しげに撫でる。これが彼らの弔いである。
死者だった身体は森に置かれたまま、そのうち消える。
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