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架空の葬送儀礼 01.『親で建てる家』

 乾いた風の吹くその土地には、簡易なレンガ造りの家が並んでいる。

 この地に住む人々が成人するタイミングは、その者の両親がどちらも死んだ時である。それが何歳であろうと、両親が死んだら一人前として扱われる。そして、一人前となった証に同じタイミングで成人したパートナーと住む家が建てられる。

 家の土台には、それぞれの両親の遺体を固めたレンガが使われる。部位ごとに分けられた遺体を埋めたレンガは、それぞれ決まった位置の床下に使われる。

 頭部は玄関口に使われ、その家に入る者を見極める。

 胴は子供部屋に使われ、産まれた子をその胸に抱く。

 腕は台所に使われ、家事を手伝う。

 脚は家のいちばん奥に使われ、いざという時財産と共に逃げる。

 親はその全身で子らの生活を守り続けるのである。

 なお、その家に複数の子がいる際は末子に対してこの儀礼が行われる。上の兄弟たちも同時に成人することになるが、両親の遺体は末子に譲られる。

 先に死んだ方の親は先にレンガに固められ、特に弔いを受けることもなく子の家の建材となる時を待つ。あくまで、両親二人の死と子の成人がセットの儀礼なのである。

 なお現代において長寿化が進み、子の成人のタイミングが遅れ続けていることが問題となっている。


元ネタ:びわ子(https://twitter.com/biwamura?s=09)さんとの会話より。

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