音ではなく、心で奏でる人

私の好きな女優のひとりに上白石萌音さんがいる。
ある出来事があって、彼女について思うことをnoteにまとめたいと思った。

萌音さんは女優の活動の傍ら自分の名義でCDアルバムもリリースしている。菅田将暉や大原櫻子のように歌える役者である。その上、以前はラジオの冠番組も持っていて、よく深夜にはお世話になっていた(笑)
彼女の歌の特徴はその緻密さというか、言葉の糸があったらそれをひとつひとつ丁寧に編んで作品にしていく感じである。オルゴールのように周りの空気が静かになるような、とても綺麗な音を奏でるのである。

『i』というミニアルバムがあって、昨日はお風呂で聴いていたのだが、その中でも「巡る」という曲は今までと少しベクトルが違うと思って、シャワーの手を止め思わず聴き入っていた。

誰だって 誰だって 知りたいって思うんだ
でもきっと 答えって
自分(ここ)にしか無いから
それならどうだっていいか 結局一緒なんだ

何回も 何回も 何回も 消したんだ
それでも 何回も 書き足してしまうよ
消しては書き紡いだ 伝えたかった言葉

上白石萌音『i』収録「巡る」より(一部抜粋)


歌い方はこれまでの曲とあまり変わらないのだが、歌詞の中の「何回も」や「僕だって」や「誰だって」のように繰り返し言葉を重ねる表現が多い。
これによって、Aメロではまだ静かだった感情表現がどんどんサビにかけて増幅されて決意になってこちらに伝わってくる感覚がある。ひとつの曲の中でどんどん変化していく彼女の気持ちを感じることが出来て、歌を聞いているのだが短編の映画や舞台を観ているようにも思える。

もちろんゴスペルやミュージカルの強い声量やビブラートにはパワフルさで言ったら負けるのかもしれない。だが、この曲は今まで丁寧に言葉を編んで作品作りをしてきた彼女ならではの魅力が詰まっているというか、収録された曲なのにいつも本物の心が宿っていると思っていて、彼女自身の人間性も作品も素敵で尊敬している。興味があれば、是非聴いてみて欲しい。

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