ボルダリングでは成果が出るのにリードでは成果が出ない現象とは?
運動において専門性を向上させるということは、別の視点から言えば、それ以外の運動は苦手になっていくということです。
あるスポーツ選手のオフトレとしてクライミングの指導をした時の話です。Aさんは常にどんな状況でも同じフォームを維持するために筋トレを重視していました。柔軟性も筋肉もバランスよく身についているけれどクライミングの簡単な動作は不得意です。理由は単純で、毎日の筋トレが習慣となって「高負荷にはこの動きで対応せよ」というシグナルが強く出過ぎるあまり、クライミングの簡単な動作も脳と体が「高負荷」と判断してしまい、ベンチプレスを上げるような出力で挑もうとしてしまうのです。
しかしその動作では登れないので脱力を意識する練習をすると、今度は普段の筋トレがうまく行かなくなる。結果的にAさんの競技にはクライミングはあまり良い効果をもたらさないと判断し別のトレーニングをおすすめしました。
もう1つの例は、ヨガの先生にクライミングの指導を頼まれた時の事です。ヨガの先生のクライミング動作は最初から美しく、とても初心者とは思えません。しかし指導をしばらく続けていくと、力を逃さず一点に込める動作がほとんど出来ないことに気がつきました。先ほど紹介したAさんとは逆の現象です。
この現象に興味を持った私は、ヨガの先生の生徒になりました。1ヶ月、2ヶ月、とヨガ教室に通っているとたしかに体が軽い。普段のウォームアップもとても楽です。しかしグレードの高いルートを登っている時、あまりにもあっさり落ちてしまいました。トレーニングをサボっていたわけでも体調が悪かったわけでもない。今まで味わったことのない「突然落ちる」という経験をして、クライミングの専門性をヨガによって失ってしまったことに気がつきました。
この2つの現象から得られるヒントは、それぞれの専門性を失ってしまった状態ではうまく対応が出来ないということです。それぞれの技術を応用することは可能ですが、専門性までも失ってしまうと逆効果になります。つまりボルダリングではフルパワーが必要になることが多いですが、それをリードクライミングに当てはめても機能せず、逆に脱力を中心とした動作で普段リードクライミングを楽しんでいる人がその動きをボルダリングに当てはめようとすると、うまく機能しません。
ボルダリングを普段楽しんでいる人がリードクライミングの成果が出ないと感じる場合は、別の競技をしているという頭の切り替えが出来ていないと考えられます。ボルダリングとリードでは力の入れ方だけでなく呼吸も大きく変わります。そういった意識の切り替えがとても重要です。
リードで成果が出ないのは、多くの場合、力の入れすぎです。そのヒントとなりそうな記事をいくつかリンクしておきますので、さらに詳しく知識を深めたい方はご活用ください。
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