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初心者の皆さんに向けて

クライミングを始めて「上手くなるにはどうすれば?」という質問をよくもらいます。私もクライミングを始めてすぐの頃は同じように思っていました。しかし、上手くなろう、と思いながら何年もクライミングをしていると「上手くなるためにはどうすれば?」という思考は、精神的な負担が大きいことが分かってきました。

自分の中になぜそのようなことが起きたのか、理由は簡単で「上手くなる」という目標にはゴールが無いのです。上手くなるとは具体的にどのような状態を指すのか?具体性はありません。漠然と上手い人、上手い人の動き、などのイメージを膨らませて、自分はそれよりも劣っている、という上下の構造を作り上げて苦しむという、あまりにも厳しいレールを敷いていました。

ある時、先輩からもらったDVD(当時はインターネットがありません)に出てきた、アメリカのクライマー、クリスシャルマに目を奪われました。クライマーと言ったらどちらかというとシリアスで真面目なイメージがある中で、彼だけは自由に伸び伸びと登っていました。キャンパスムーブが多く、足を使って登るみたいなセオリーは完全に無視。課題が登れないことに対して悔しい感じもなく、登れなくても楽しそう。そういうスタイルに共感を覚えて、私は思いました。

上手くなることは一旦忘れよう。自分のスタイルを追求しよう。

それから、自分の身長、体の最も柔らかい部分、筋肉のつきやすさ、思考のパターン、など自分で自分を観察しながら、クライミングを続けました。すると不思議なことに、クリスシャルマのようにキャンパスムーブが多くなってきて、振り子運動の有効性に気付きました。それと同時に円運動の重要性にも気付かされました。

私は思うのですが、読者の皆さんが、例えば映像でもリアルでも何かの対象を見ていて「真似してみたい」と思ったら、高い確率でその人の動きが合っていると思うのです。人間は生まれて今まで、数えきれない選択と失敗と成功を繰り返しています。寝ようかな?もう少し起きてようかな?という些細なことを含めると、選択と失敗と成功の数は天文学的な数字に登るでしょう。

その数字は、ある特定のパターンを作ります。そのパターンの集合体が個性と呼ばれるものです。DNAが肉体の構造を設計しているような感じですね。そして、その個性は五感に浸透して、人間が生きていく上でより良い選択をするように、直感として私たちに最適な選択のヒントをくれます。そのヒントこそが「真似してみたい」という気付きなのでは無いかと思うのです。

上手い人が言ったことが全て合っているわけではないし、多くの人が成功している課題だから自分が成功するとは限らないのです。上手くなるという目標は、実は目標ではなく象徴だと思うのです。必要なことは、個性に気付き、それを伸ばす作業です。まずは自分の観察から始めてみてください。そこからスタートすると出来ないことも楽しめるし、出来た時の喜びも大きいものです。

ちなみに、あくまで私の成功体験をもとにしたメソッドですが、参考になれば幸いです。

最後に

誰もがはじめは初心者です。初心者であるというのは、これから数えきれない楽しみの体験が待っているという、最高のスタートだと私は思います。読者の皆さんには、自分のペース、自分のやり方で、クライミングを楽しく続けていって欲しいです。

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