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同じ人を探す夜

こんばんは。今日もお疲れさまでした。

彼は手を繋ぐことに何の躊躇いも持たない人でした。いつも当たり前のように手を差し出し、私を引き寄せていました。私はそれを恥ずかしいと思っていましたが、彼にその理屈はききませんでした。

手を繋ぎ、ハグをし、キスをすることをどんな場所でも躊躇いなく実行します。知っている人は誰もいない安心感だったのかもしれません。私の行動範囲に彼はいつもやってきました。

すぐ近くまで迎えにきて、手を繋ぎ、言葉を交わすよりもスキンシップを好みました。駅でも、歩いていても、食事中でも彼はすぐに触れてきます。今のようにマスクをしていなかったので、余計に距離が近く感じました。

「大丈夫。誰も気にしてないよ」

私が顔を背けたり、手を引っ込めるといつも子供をあやすように囁きます。そして、いつもそのペースに巻き込まれるのです。あの時私はどんな顔をしていたのでしょうか?

その内、私は彼に慣らされてしまいました。どんな人と会っていても、どこかが触れ合っていないのは、何かが欠けている感覚に陥ります。

きっとそれが紳士というものです。頭ではわかっていても、目の前の手に触れられないのは辛いのです。誰かが見ていても、私はその手をすぐに食べたいのです。

そんな人は、マッチングアプリですぐに見つかると思っていました。でも、意外といないものです。私は今も彼を心のどこかで探しています。

彼には会いたくないけど、彼と同じ感覚の人を探しているのです。

彼は私を「一目見て、すぐに分かった」と言っていました。「同じ匂いがするんだよ」と言われて、その時は意味がわかりませんでした。

私はいつ一目見て、彼と同じ、私と同じ人を見つけられるのでしょうか?今日も期待を込めてアプリを開きます。ボーイフレンド達とは違う、私を同じ人を見つけるための夜はまだまだ続きます。おやすみなさい。

↓彼の話はこちら


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