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夜が来る前のさようなら

こんばんは。今日もお疲れさまでした。

マッチングアプリを初めて最初に会った彼の事は覚えていますか?私は今も鮮明に覚えています。

日本人だと思ってマッチした彼は、日系イギリス人で、メッセージのやり取りは全て英語でした。私が英語があまりできない事がわかると、彼は簡単な英語でやり取りをしてくれました。毎日「今日は何食べた?」「納豆」「信じられない!絶対食べる事ができないよ」みたいなやり取りでしたが、その時の私には、毎日誰かと触れ合える時間がなんだかとても嬉しいものでした。

1ヶ月ほどやり取りをしたある日、お茶をしようという事になり、私は日曜日の銀座に繰り出しました。待ち合わせ場所に着くと、彼は車で来ていて駐車場がないから、車を止められる町まで行こうと言いました。

私はその言葉を間に受けて素直に車の助手席に乗り込みました。私でも値段の予測がつく銀色のエクスペンシブなスポーツカーでした。

「どこに行くの?」「どんな街によく行くの?」

「日本語はよく分からないんだ、教えてよ」

私たちの会話はよく噛み合わないまま、あるタワーマンションの前で彼が車を止めました。

「このマンションのカフェに行ってから僕の部屋に来る?それとも、時間がないならこのまま僕の部屋に来る?」

この言葉の意味はなんとなくわかりました。ただ今までそんな事が起こった事がない私は、そんなはずはないと勝手に思ってしまったのです。私のような40手前の特に見栄えがするわけでもない、スタイルがいいわけでもない女にそんな事はないだろうと…。

私は彼の部屋に行ってしまいました。その後起こる事は頭の片隅にありながら。彼の部屋には大きくて綺麗に整えられたベッドが一つがあるだけでした。

逃げ出せないまま、全てが終わった彼は、駅まで送ってくれました。それが紳士の役割だからと言って。そのマンションの位置も分からない私は、彼のスポーツカーに再び乗車しました。ただ、行きと違うのは、私は彼を警戒していました。きっと傷つけられたという顔をしていたのでしょう。「わかっていたでしょう?」と流暢な日本語で彼は私に言いました。

私たちはまた銀座で別れ、その瞬間、彼は私とのマッチを解除しました。夜の帳が降り始めようとしていました。夜が来るとともに、彼は私の元からいなくなりました。

私たちは夜をともにする運命はなかったのでしょう。まだ何も覚悟のなかった自分を思い知った夜の始まりでした。たまにふっとあの時の事を考えます。今の私なら、彼と長い関係を築けたのでしょうか?縁があればいつかはわかるのかもしれません。おやすみなさい。

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