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僕はスピッツを使い分ける

 急遽4つ目に、自殺したくなったら聞いて欲しい曲を追加しました。これからも、僕なりの視点でスピッツを紐解いてみたいと思います。

 急に書きたくなるスピッツシリーズ第二弾。ただ書きたいから書いているだけ。週替わりで違う曲をセレクトしちゃいそうです。(第一弾はこちら)

1.涙活デトックス:「みなと」・「楓」・「ありがとさん」・「1987→」

【みなと】
歌をも超えた、一つの作品として完成された曲。PV見れば分かると思います。
謎の下馬評では「ついにロビンソンを超える曲が現れた」とのこと。笑

やっぱり、大事な誰かが亡くなった情景が頭に浮かぶ。スピッツが、亡くした心情を書き上げるとこうなるのか。

「遠くに旅立った君の証拠も徐々にぼやけて」そういうものなんだ。じーちゃんばーちゃん元気かな。証拠は心に残しておこう。

【楓】
説明不要の永遠の名曲。シンプルに聞こえるのに難しい。ライブで流れると過半数が泣いている。

「君の声を 抱いて歩いて行く」は、いつも涙を引き寄せる。
最初に聴いたのは、高校での交通事故で入院したときだったかな。

2014年以降のライブでは大サビの冒頭が、草野氏のギターソロになっています。照明も相まって、あれは反則です。
多くのアーティストがカバーをしている。それだけ素晴らしい曲ということですね。

【ありがとさん】
連れ添った人とお別れした時の歌なのかな。ゆったりしているもののハードな音色や、「ありがと『さん』」とか。少しとぼけた様な、あっけらかんとしたAメロ。
照れ隠しの様にも聞こえるのですが、サビに入った途端に溢れる感情。

「謎の不機嫌 それすら 今は愛しく 顧みれば 愚かで 恥ずかしいけど いつか常識的な形を失ったら そん時は化けてでも届けよう ありがとさん」

【1987→】
30年の時を経て、「ドブネズミみたいに美しくなりたい」と吐き捨てた、青い心に憧れた少年たちが、今ここでパンクを歌い散らしている。

「らしくない自分になりたい」

内なるスピッツ、外なるスピッツ。圧倒的な自己認識。スピッツを知り尽くし、その上で正直に、やりたいことに向き合う、弱くて強いスピッツがここにいる。

「ヘビーメロウ(目覚ましテレビ主題歌)」と「歌ウサギ(映画『先生!、、、好きになってもいいですか?』主題歌)」で、外なるスピッツを演じることができたので、あとは勝手にやらせてもらうぜ!みたいな感じ。

「醒めない」とともに、スピッツの歴史を3分で浴びることができる。
カッコよくて泣けるんだ。カッコ悪くて泣けるんだ。その生き様が泣けるんだ。

2.襟を正す:「ビギナー」・「ルキンフォー」・「夢追い虫」・「ネズミの進化」

【ビギナー】
優しすぎない伴走曲。押し付けない応援曲。

「同じこと叫ぶ 理想家の覚悟 つまづいた後のすり傷の痛み 懲りずに憧れ 練り上げた嘘が いつかは形を持つと信じている」
屈指のCメロ。
圧倒的な演奏による力強い音が、背中を押す、というより、一緒に横に並んで同じ方を向いてくれる感じ。ライブVer.で是非。

【ルキンフォー】
探している。何か見つかりそうなときに聴く。
「ダメなことばかりで 折れそうになるけれど 風向きはいきなり 変わることもある ひとりで起き上がる」
ひとりで起き上がるんだ。
「起き上がれ」でも「起き上がろう」でも「起き上がれる」でもない「起き上がる」。絶妙な距離感
「ビギナー」と同様に、押しつけがましくない、同じ目線での応援歌に聞こえる。

【夢追い虫】
ゴリゴリのサウンドから醸すエロに迷い込んでいく。
「上みるな 下みるな 誰もがそういうけれど 憧れ 裏切られ 傷つかない方法も身に付け 乗り越え どこへ行こうか」
マサムネ氏の爆高音の直後の静寂に響く歌詞。
人間特有の苦悩や感覚を持って、僕らはどこにいくのか。何のために生きるのか
「命短き ちっぽけな虫です 嬉しくて悲しくて 君と踊る」

【ネズミの進化】
マジでスピッツにしか書けない、圧倒的弱者視点の反骨歌

「じっとしていたら叩かれて 素直に進めば潰される」
「小さなネズミになる 奴らにも届かない場所がある すぐに狭い抜け穴 逃げ込めるような 小さなネズミになる」

アコギとキーボードのひねくれた旋律。2009年のライブでは「ロビンソン」と「夜を駆ける」という強打者を、最高の進塁打でつなぎ合わせた、大好きな一曲。

3.身体を動かす:「みそか」・「甘ったれクリーチャー」・「TRABANT」・「8823」

【みそか】
爽やかに突き抜ける。聴けば分かる爽快さ。
「越えて 越えて 越えて行く 命が駆け出す 悩んで 悩んで はじまるよ 必ずここから」
「混ざって 混ざって でかすぎる 世界を塗りつぶせ 浮いて 浮いて 浮きまくる  覚悟はできるか」

影分身のように走り抜ける、中田英寿さんのアクエリアスのCMが超カッコ良かった。ポカリ派からアクエリアス派に乗り換えた瞬間だった。笑

【甘ったれクリーチャー】
演奏がバカかっこいい。ただそれだけ。
歌詞を見たら、ただドMな男の「ヤられたい」願望にしか見えない。表層的なSっ気気取りが圧倒的な興奮によりドMに目覚めたようにしか思えない。
J-WAVEのライブでは白シャツ統一で、「そしてすぐにここで甘えたい 君の手で もみくちゃに乱されて 新しい生き物になりたい」とか言っている。

そういう意味での「身体を動かす」ではない、はず。笑

【TRABANT】
キレと疾走感にあふれている。聴き慣れないこのタイトルは車の名前らしい。ドイツ語で「随伴」「旅の道連れ」という意味。なんか分かる。
ちょっと曇があるAメロから一転、サビは晴天を取り戻す。
「曇り空を突き抜けて 君と旅に出たい まだ前書きの物語 崩れそうな背景を染めていけ」
「高い柵を乗り越えて 君と旅に出たい 本当の温もり想定して すすけてる鳩を解き放て」
分かるようで分からない歌詞。その答えは筋トレの先にあると信じて鍛えます。笑

【8823】
ほぼ必ずライブセトリに入り、みんなが飛び跳ね盛り上がる。読み方は「ハヤブサ」
「クズと呼ばれても笑う!」クズなんてそうそう呼ばれないし、呼ばれたところで笑えない。スピッツの優しくて強い内側を垣間見た。
「君を自由にできるのは 宇宙でただ一人だけ」初めて聴いた時、ここでいう「君」は、惚れた女のことかと思ってた。今は違う。ここでいう「君」は、僕だ。

ドラム崎山氏。ドラム速すぎて手元が見えない。
ギター三輪氏。徐々に激しくなりつつも繊細な旋律。
ベース田村氏。コード抜けて弦を切って画面から消える。
ボーカル草野氏。暴れる後ろを横目に猫背でまっすぐに歌い続ける。

4.自殺したくなったら:「スピカ」・「謝々!」・「小さな生き物」「あかりちゃん」

【スピカ】
スピッツの中でもとりわけ歌詞が良い曲として名高い名曲。歌詞中全ての言葉が人類にとって優しく、必要な言葉。

絶妙なロック感。程よくポジティブな曲調。なぜシングルで出さない!?と思ったら、なんと「楓」のB面。なんってことだ。なんってことだ。

屈指のフレーズ「幸せは途切れながらも続くのです
不幸は必ず訪れること。そしてそれは終わり、また幸せが来ることを約束してくれる。

死にたくなったらこれを聴こう。スピッツを聴こう。そしてYouTubeのコメント欄を見よう。スピッツ動画のコメント欄は優しさで溢れている。

【謝々!】
豪華なコーラスと管楽器、ピアノの旋律に彩られた曲。杏さんがカバーしていました。

押し付けがましくないスピッツですが、ここでは丁寧な「ですます調」で励ましてくれる。

「終わることなどないのだと 強く思い込んでれば 誰かのせいにしなくても どうにかやっていけます やり直しても良いのです 今度はひとりぼっちでも 記号化されたこの部屋から ついに旅立っていくんです」

「何もかも悲しい程に あくまで優しい君に謝々!!」

誰かがあなたに感謝しています。スピッツがあなたに感謝しています。

【小さな生き物】
僕は病んでいた時、ZARDの「負けないで」が聴けなかった経験があります。「応援ソング」とググって、かたっぱしから聴きましたが、かなり重かった。間違ってもZARDを否定しているわけではありません。

そんな時、改めてこの曲を聴くと、冒頭が「負けないよ」でした。そうか、スピッツも辛かったんだと。
例えば自殺したい時って、何も受け取れない様な気がして。自分から判断もできないし、正しいことを言われても、それを受け入れられないと思うのです。
そんな時にこの曲は、近くで寄り添いながら一緒に少しずつ前を向き始める姿を感じさせてくれる。

「深く掘って埋めても 無くせないはずだから 裸の言葉 隠さずさらす そこから始めよう」

小さな星のすみっこで、人間という小さな生き物が、少しだけ未来を考える。

【あかりちゃん】
 2011年の震災の時に草野氏は体調を崩し、いくつかのライブが延期になりました。延期となってしまったライブのために作られ演奏された曲が「あかりちゃん」です。
 音源は少なく、ファンクラブ限定ツアーのお土産DVDにのみ収録されています。ただただスタジオで真摯に演奏しているだけの映像なのですが、誰がこれを嫌いだと言うまいか、と思わせるほどに綺麗で穏やかな曲。

「僕は生きる 今を生きる 歌い続けてる」「僕は生きる 明日も多分 歌い続けてる」

生きたくなくなったら、スピッツを聴こう。彼らは歌い続けている。彼らが歌ってくれる限り、僕らには生きる理由がある。

さて、明日は何をしようかな。

では。


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