【雑記】落語と私【山】
社会人落語家の端くれの話
休みの日は何してるの?
そんな問い合わせをよくいただきます。
お答えいたしましょう。
寝ています。
本当です。何もする気になれなくて。
だって休みですからね。
あとは洗濯してます。
ここでは落語と私の雑記を書いていきます。
♡10個いただきました!
ありがとうございます!感謝!
あなたに落語をやってほしいんだけど
出演料ははいくら欲しいの?
こんな質問もよくいただきます。
お答えいたしましょう。
無料です。素人なので。
ということで本日も始まります!
よろしくお願いします。
社会人落語家 中家すゞめ
落語&講談
202009 飯坂温泉 常泉寺にて
第五回「丁稚の心目覚めて山が見える」
ライバルというものは
青春の一幕にいた方が良い。
互いに高め合うならなおのこと。
片方が片方を自分より上に行かれることを
良しとしない場合、歪みが生じるのだ。
女子友の間にはこの歪みが度々現れる。
いや、
たまたま歪みに足を踏み入れたのかもしれない。
新宿末廣亭の2階は畳敷だ。
真正面から見る高座は良いが、
たまに見下ろすのも風情がある。
意外と高座からもお客の顔はわかるらしい。
「二階にね、若いカップルがいるんですよ。
喬太郎?誰?
知らなーい。ねぇ、おじさんばっかだね。
本当だね。
って言う会話をね、してるんじゃないですか?
馬鹿野郎!本当の寄席には
長瀬智也も岡田准一もいねーんだよ!」
柳家喬太郎が高座で全開で飛ばしていた。
タイガー&ドラゴンのおかげか、
若いお客さんが増えたそうだ。
私もその一人、当時20代。
寄席には一人で出かけることが多くなった。
その頃の行きつけは、
上野、池袋、新宿だった。
時々は九段下にも足を運ぶ。
お気づきだろうか。
落語協会だけを見ているのだ。
この時点で私はまだ芸協を知らない。
そのうちの一軒、
新宿末廣亭でアルバイトを募集していた。
私の行くべきはここかもしれない。
寄席に行きたいから、
落語を見たいから仕事をやる。
まさに推しのATM状態。
寄席で働きゃあ一石二鳥じゃあないか!!
「すいません!」
「はい?」
木戸口にいた男性に声をかけた。
「アルバイト募集してるんですか?」
「まあ、はい。
…ちょっとこっちいらっしゃい」
席亭だった。
通された所は裏口から入った
すっごいせっまい机と椅子でパンパンな部屋。
「週一でも良いですか?」
「今、働いてるの?」
「はい。」
「…働いてるならダメだよ。」
秒殺で終わった。
勢いでなんとかなる話では無かったのだ。
気の迷いだったのだと自分に言い聞かせ
私は水道さんと一緒に
落語話で盛り上がる方を選んだ。
推しがいる生活は仕事にも
少なからず影響を与える。
落語の世界が好きになると何故か
人に優しく良いことをしようと思う。
サービスカウンターに訪れたお客さんが
椅子のキャップが売り場になくて
困っているというのだ。
東急ハンズ二子玉川店は問屋から
何がなんでも取り寄せるという技を持っている。
お安い御用だ。お取り寄せいたしましょう!
カタログを広げると
「あー、コレコレ!」
「入荷したらお知らせしますね。」
「ありがとうー!!」
ご満足の様子で帰っていった。
番頭さん、丁稚はお客さんを満足させましたよ。
そんな気分だった。
入荷後に椅子のキャップを取りに来たお客さんに
「この前はありがとう。
今日、届いたの。助かったわ。」
「あ、こちらこそ。」
お礼まで言われて。
旦那さん、丁稚はお客さんに
感謝されましたよって言いたい気分だった。
「38、最近評判良いね。」
いつもだいたい駅まで一緒に帰るのは
彼氏がいるけど浮気しちゃう女友達。
「なんか、服も変わった?」
推しに会うから
なんとなく良く見える服を着るようになった。
「え?いや、そんなそんな。」
陰キャなため、目立つ行動は避けていた。
しかしながら、
椅子の脚キャップのお客さんから
感謝の手紙をいただき、
終業後の集会で主任さんからみんなの前で
渡されたのだ。これは目立つ。
「38が私より良く見られてるの許せない。
38なんか、何もやってないよね?
私の方がやってるよ!普段から!」
どうした、どうした?落ち着けよ。
私は何も言えずただ聞いていた。
話題を変えるしかない、そう思った。
「この前、末廣亭でバイト募集してて、
週一でも入れないか
聞いてみたら速攻断られたんだ。」
なんでも話し合っていたので、
私は彼女にしてはいけない話をし
「仕事舐めてんの?バイトしたいなら
うちやめてそっち行きなよ。
ていうか、やめれば?やる気ないでしょ?
ふざけてる!」
地雷を踏んだ。
「とにかく、私より上に立たないで。
あんたより下なんて耐えられない。
38のくせに生意気。」
彼女は不機嫌のまま、
電車に乗り込みホームから去った。
これがマウントだとは気づいていないが、
モヤっとしたのを覚えている。
ここから5〜6年後には親友から
同じことを言われるのだが、
この時はまだそれは知らない。
そんなこんなで
推しへの気持ちはとどまることを知らない。
あろうことがあるまいことか
次の念々寄席の開催が決まると私は
大念寺に電話をし、
「もし良かったら、お手伝いさせてください!」
世話人として、寄席に関わるチャンスを狙った。
「そうですか?じゃあ、手伝ってください!」
大念寺の受け皿は大きく
寄席スタッフとして
会場入りを果たすことになる。
それまでの日々も落語を楽しむための
資金作りにフルタイム労働。
楽しみのなかった日々に比べ
やりがいを感じるようになっていく。
この数ヶ月後にどん底に落ちることも知らず。
神奈川生活、
いよいよ佳境に入ってまいります!!
本日のところは文字数がいっぱいいっぱい!
この続きはまた、次回!!
コロナ前の花座にて。
社会人落語の会で出演させてもらいました!
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