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50年後の夢

「お花屋さんになれますように」
幼稚園児の頃、七夕の短冊にそう書いた記憶がある。

『友達に聞いた!幼稚園の時、将来の夢は何だった?調査(私調べ)』によると、いつの時代も大半の女子は「お花屋さん」か「ケーキ屋さん」になるのが夢だ。“大半の女子”なんていうと昨今のジェンダーご配慮社会的には良くないのかもしれないけど、まぁとにかく幼稚園女児はこの2つの派閥に分けられる。『ポケットモンスター花屋/ケーキ屋』があってもおかしくないくらいの二大巨頭だ。花は可愛い、ケーキは美味しい、たぶんそんな単純な理由でこの二つが人気だったんだと思う。

 しかし、小学校に上がるとそんな勢力図も変わる。ケーキ屋さん(言い方としてはパティシエに変わるが)になりたい女子は割と残っているもののお花屋さんを志す者はぱったりと消えてしまう。あれだけ人気だったのに何故かぱったり消える、一発屋芸人並みに早く花屋の存在が忘れ去られるのだ。かくいう私もその1人で、小学校高学年くらいには「公務員」なんて答えてた気がする。小学生にしてはつまんねぇ、夢がねぇなと思う。その後、中学、高校、大学と分かりやすい夢もなく、とりあえず就職活動を終え、結局花屋でも公務員でもなくただの会社員になる予定だ。

 しかし、『人生の夏休み』も残りわずかとなった大学4年生の今、改めて思うのだ。「いつかはお花屋さんになりたいな~」と。なぜかというと、お花屋さんはキレイだからだ。単純に花の綺麗さだけじゃない、心が綺麗な人が多いと思う。私は今飲食店でバイトをしているのだが、時々クレーマーとかすっごく嫌な感じの態度が悪い人に遭遇して不快な気持ちになる。大学生になってバイトをするまで知らなかったが、世の中には嫌な人や理不尽な人が結構いるらしい。でも、花屋ってそういう客があまり来なさそうじゃないか。買い物したときに「ありがとう」って言ってくれるタイプのお客さんが多そうじゃないか。よく考えてみてほしい、花を家に飾る人なんて大体性格が良いに決まってる、たぶん。大理石の床の玄関にでっかい花を飾るとか推しのライブにフラワースタンドを送るとかピアノの発表会とかお見舞いとかお墓参りとか、、他にも花を買うシチュエーションは色々あると思うけど総じて花を買う時に心が荒んでいる人は少ないと思う。横柄で態度の悪い客は少ないと思うのだ。
  そして何より単純に花はやっぱり可愛いし癒される。そんな環境で働いたら自分が浄化されそうだし、心穏やかになりそうだ。そういう訳で、私は花屋になりたい。田舎で小さな花屋を開きたい。毎朝、店先のお花たちに水やりをしながら、小学校に登校する子供達に「行ってらっしゃ〜い」と言いたい。それが今の私の夢だ。

ちなみにこのお花屋さんになりたいという夢をバイト先の店長に話したら店に飾ってある花を指さしながら「あの花しょっちゅう虫が付くからどうにかしてくれ」と文句を入れようかと思っているんだと言っていた。さすがに綺麗な客しか来ない仕事なんて無いみたいだ。

でもまぁやっぱり憧れは捨てきれない。人生百年時代なんて言うし、おばあちゃんになったら田舎町で小さな花屋を開きたいという夢は心の片隅に置いておく。


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