dawn
結局、わたしを苦しめて、縛っていた張本人こそ、わたしであったのだと気づいたが為に、「ばっかみたい」と思わず笑ってしまったのだが、それすらあなたの気に、あるいは当然障るわけであって(なぜなら、すべてはわたしの中で起きた第二次ビッグバンで、ユーリカと叫びたくなるほどの、すなわち稲妻の如く鮮明に判明した事実であり、外側には一切わかるはずはないから)、結果、やはりというかなんというか、今度は右頬を張ったかれた。
しかし、幸福なことに、もはや一度気づいてしまったが最後、二度と戻れはしない。いつもなら、次に来る攻撃、ないし「はやく終われ」と一刻でも早く嵐がおさまりたもう事を、文字通り頭を垂れ、祈るがごとく(誰に?)、ただ身をちいさく小さく、いっそ消えてしまわんばかりに縮こまって、震えていた。
あなたは確かにやさしかった。そのやさしさは、今わたしが理解した事柄に似て、あなたの首を絞める様な、弱さを多分に占めた類の、所詮切れたら一気に怒りのボルテージをあげて、最悪破滅へまっしぐらな、そんな頼りない、あるいは慰みの、いっ時の感情のひとつだった。
それでも、わたしはすべてが嘘偽りだったとは思わない。
どの一瞬も、二律背反で、だから本当でもあったことだ。
あんなにもわたしを怖がらせていた、暴風雨の如き声で、時にひどく汚い言葉で編まれる罵倒すら、ノイズには変わりなくとも、もはやBGMの様な具合で、今わたしの頭をすべっていくのは、なけなしの金をはたいて縋るようにしてきた占い、そこで言われた言葉たち、その中でも麻酔の様に、あるいは麻薬のそれに似て、特に効いた「あと少し待てば」。ただ一人でも、これを言ってくれたなら、それが希望にそのまま、弱りかけた心もまた新たに灯った。裏を返せば、それほどまで脆弱に成り果てていたのだ。
まだわたしが外界と関わることが幾分マシにできていた頃、友人は眉根をさげ、ガーゼの様な声音で口にした、「占いが呪いに成らないようにね」、それこそがわたしにとって必要な、薬草の様な言葉だった。随分遅れて、でも、多分しっかり働いてくれていた。
そこにかけたお金があれば、たとえ僅かであろうと、どんな違う今を自らに見せてやることができただろう。そんな風に思うと、また笑みが溢れたが、わたしの事を慮る様な言葉に混ぜた自分語りに夢中なのか、今度は気づかなかったらしい。
嗚呼、これからどうしようか。
気づいてしまえば、たとえ、そうは本気に思えずとも、本当に、いくらでも自由な気がした。
もう分かりきっていた。これは、まず、わたしが決めれば、終わる。あるいはどれほど小さくとも変わりない萌芽を、今度こそ認めることができる。
今までも何度となくそれを感じていた。ただ自分のなかで決定打になる迄育てることが、あるいは"本物"にすることができなかった。
そう冷静に客観的に述べられるほど、これは段違いな感触だ。
黙り続けるわたしに、今日は飽きたのか、去っていく背中を、下がったままの髪の隙間から見送る。
不意に溢れた涙は、歓喜と、郷愁と感謝のものだ。
ただひとつだけ、あなたのなかにまだ、わたしが最後まで探し続けたあなたが居ることを、わたしは知っている。
ここを去ったあと、もう二度と、あなたに会うことはないでしょう。ただ、今日までのあなたと共に、わたしは生きている限り何度でも、あなたをきっと思い出す。
どうか健やかに。いつの日か、あなたに似た新しい"あなた"が表れて、あるいは、あの柔和で、時に正直な声で泣き出してしまいたくなるくらい、透き通った心から来る面を纏うことはあるのかな。きっとそのあなたは、今よりずっと強く、本当に、誰がなんと言おうと、本当にやさしい人なのだと思う。
ふと見た、わたしの手は、引っ掻き傷で濡れていた。その手をもう片方の掌で握る。連れ出すように、そっと、確かに。
さようなら。
いままでありがとう。
そして、ありがとう。お待たせしました、わたし。
いままで、待っていてくれてありがとう。
さぁ、行こう、いきましょう。
わたしは、わたしを生きる。
太陽、ひかりのもと
✳︎
2022.10.20に書いたお話
本来の、あるいはほんとうのじぶん、そしてほんとうのじぶんのちからをわすれて、他者やじぶん以外のものに依存していたこと、それはかなしかったな、と、きょうのお天気や、空や太陽の下でそう想ったとき、この話を書いたことを思い出しました。
年齢も常識も、他者も、あるいは占いも、あなたのちからが吸い取られるような感覚があるのなら、あなたがそれをのぞむのなら、いつでも手放していい。
このたのしいせかいを、あなたの好きなように、あなたらしく生きて。
だれも制限をかけていないし、これからもずっと、あなたはそれに頼らずとも、自由に羽ばたいていけるちからがある。
愛を込めて。
生まれてきてくれて、ありがとう。
わらって、あなたよ、あなたを生きて。
エンパワーメント
想い出して
あなたは、あなたのちからがある
『信』
人+言
ロゴスとしてのいのち、人
想い出して
じぶんを生きることの、なんという清々しさ、
軽やかさ
ただ"I LOVE YOU"の向かいたい方向、その先へ
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?