ほめ方・叱り方の基本
新人看護師のプリセプターになってしまった。
「教え方なんて習ってないのに、どう接したらいいのかわからない。」とか
「プリセプターにならないといけないなら、もう辞めます!」
私は全国の看護協会や病院、介護施設で実地指導者研修をやっているので、毎年こうした声をたくさんたくさん耳にしています。
3年目、4年目になるとつきまとう実地指導という役割。
プリセプターシップをとっていない病院でもメンターだとか、エルダーだとか
(でも結局、業務も教えることになっちゃいますけどね)で、
新人との関わりは避けられないもの。
恐る恐る、良かれと思って指導してたら、新人が泣いてしまった。
次の日から出てこなくなった。うつ病で休職した。辞めちゃた。などなど
指導者の悩みはつきない、、、そんなふうに思ってしまうかもしれません。
私は看護師を5年、教員を7年半やっていました。
今でも教育コンサルティングで様々な医療従事者にコーチングや接遇をLessonしていますが、
教えることって本当は「すごく楽しい」。そして「やりがいがある」ものだと思っています。
そう、教育はめちゃくちゃ楽しくて、尊くてちょっとクセになっちゃうようなものなんですよ。
指導ってちょっと楽しいかもと、思ってもらえるように、このブログではいろんな指導のテクニックをご紹介します。
いいところは具体的にハッキリほめる(条件付き肯定)
条件付き肯定の例
1,報告するとき「今、よろしいですか、報告が1件あります。」と結論から言っているからわかりやすいね。とほめた
2,ナースコールがなるといつも率先してでてるよね、助かるよ
3,忙しくて仕事が終わりそうにないと思ったとき、すぐ相談にこれるよね
こんなふうにほめるのが「いいほめ方」で、
上記のセリフが具体的な行動や条件です。
この表現は、ただこの新人が可愛いとか好きっていうことでほめているわけでなく、その新人の具体的な行動、条件をほめていますね。
こうしたほめ方を「条件付き肯定」といいます。
いくつになっても人は、褒められると嬉しいもの。
なのでその人は「条件付き肯定」をされた行動や条件を増やすようになります。
つまり、その行動や条件が強化され、「ほめて伸ばす」という結果につながるのですね。
(!ご注意 この方法でうまくいかない人もまれにいます。そういうタイプの方のほめ方は、「ほめて伸びる人、ほめて伸びない人」の回を見てくださいね)
※ 参考 新人・若手・学生のやる気と本気の育て方 奥山美奈著 日総研出版
直してほしいところは具体的にハッキリ否定する(条件付き否定)
条件付き否定の例
4,仕事が遅い新人に、効率的なやり方を具体的に教えて「明日から時間外勤務を減らせるようにね」と、注意した
5,感染の疑いが高い「医療廃棄物の処理の甘さを厳重注意」し、安全な方法を教えた
6,マツエクが超、長すぎる新人に「せめてjカールで半分の長さにしたら?」とリクエストした
こんなふうに叱ったり、注意したりするのが「いい叱り方」で、「いいほめ方」同様に上記のセリフが具体的な行動や条件です。
今表現はただこの新人が気に入らないというような動機ではなく、新人の具体的な行動や条件を叱ったり、注意していますね。
こうした叱り方を「条件付き否定」といいます。
大人になればなるほど人は、叱られたり注意されることは嫌だと感じます。
なので人は叱られたり注意された「行動や条件を減らす」ようになります。
(意地でも! 笑)
つまり、その行動や条件が減少する、つまり叱ったり、注意することで行動が改善されるわけですね。
(!ご注意 この方法でうまくいかない人もまれにいます。そういうタイプの方のほめ方は、「ほめて伸びる人、ほめて伸びない人」の回を見てくださいね)
あいまいな叱り方は「人格否定」と捉えられる(無条件否定)
無条件の否定の例
7,反応が薄くて、何を考えているのかわからない新人に「そんなんじゃ、看護師としてはやっていけないよ」とピシッと喝を入れた
8,几帳面に見えるが、物品の片付けがずさんな新人に、「結構、仕事が雑だから、気をつけないとダメだよ」と注意した
9,メモをとってはいるが、何度も同じことを聞いてくる新人に「何回も同じこと聞いちゃうと、みんなに『やる気ない』って思われるよ」と指導した
こんなふうに叱るのが「よくない叱り方」。これはダメ、一番やっちゃいけないやつです。なぜなら相手をめちゃくちゃ傷つけるからです。
上記のセリフは前述した「条件付き否定」のように具体的な行動や条件ではありません。
条件が限定されていないので「無条件否定」というくくりになります。
相手は「どこをどう直せばいいのか?」が具体的にわからないので、
その人の「人格否定」になってしまいます。
「そんなんじゃ、看護師としてやっていけないよ」→「そんなんじゃ」っていうのが理由が明確になってないので「あなたは」に翻訳されてしまいます。
「そんなんじゃ、看護師としてやっていけないよ」 → 「あなたは、看護師としてやっていけないよ」と、相手の頭の中で変換される。
他のセリフも同様です。
几帳面に見えるが、物品の片付けがずさんな新人に、
「結構、仕事が雑だから、気をつけないとダメだよ」と注意した
→ 「あなたは、仕事が雑」に変換。
メモをとってはいるが、何度も同じことを聞いてくる新人に
「メモとっても何回も同じこと聞いちゃうと、みんなに『やる気ない』って思われるよ」と指導した
→ 「あなたはやる気ないの人」「あなたはメモとっても覚えられない人」というふうに相手の頭の中で変換されます。
こうした注意のされ方ばかりが続くと不適応を起こして、「もう辞めます」なんて、新人の一年目の離職につながってしまうかもしれません。
叱ったり、注意したりするときは「条件付きの否定」にすることが重要です。
特に9番の言い方は、よくない理由がもっとたくさんあります。
「みんなに『やる気ない』て思われちゃうよ」というのは、WEメッセージのよくない使い方でしかも、強くその人を支配する「暗示の言葉」になります。
言われた人の未来の可能性を奪う、最もよくない言葉の使い方です。
(あわせて読みたい WEメッセージの使い方、人を強烈に支配する暗示の言葉)
皆さんもこれまでの人生で出会った人(学校の先生や上司や身内など)の中に、少なからず、「嫌な言い方するなぁ」と思う人がいたと思います。
その人が使っていたセリフはきっとこの「無条件否定」のことがほとんどですよ。
一度、あなたがもらった「無条件否定のセリフ」を書き出し、一気に整理するのをオススメします。
でないと、人は教わったように教えるもの。
耳にこれらの言葉が整理されずに残っていると無意識に表出してしまうことがあり、相手を傷つけてしまうことがあるからです。(あわせて読みたい つい、人を傷つけるきつい言葉を言ってしまいます。)
虐待を受けた人は虐待をしてしまうことがあるともいわれます。
それと同じことが起こりうるのですね。
特に心優しい看護師さんというパーソナリティの方々は、相手を傷つけたことで自分も傷ついてしまう人が多いので、早めに対処しておきましょう!
※参考文献 対人力を磨く22の方法 奥山美奈著 メディカ出版
相手に自己肯定感を与える最上級のメッセージ(無条件肯定)
無条件肯定とは
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