仕事中の電気工事士

㉘初めての四輪車、其の一。

この話は㉒車が要る、其の四。の続きです。

カナダで初めて車を所有した。カナダに来てからの運転歴としてはアメリカへビザの延長に行く必要があって、知り合いのホンダを借りて往復したことが一回あっただけ。オートバイに乗ったのも数ヶ月だったから、カナダでの運転歴はまことに短期間だけのものだった。

ピックアップトラックを持ってみて思ったが、まあとにかくやたらと図体がでかい。前側に立ってみるとボンネットが肩位までの高さがあり、小柄な女性ならその位置から運転席の窓が見えない。私ですら圧倒される大きさであり、後部の荷台の箱もこれまた無駄に広い。

面白ことにボンネットを開けてエンジンを見ると、意外と真ん中にちょこんと鎮座しているだけで、やはり我体が無駄に大きいことがよく分かる。買ってみてから注意深く(且つ適当に)あれこれ動かしてみると、いろんな問題点が出てきた。(買う前にやれ!)

もう過去の話であまり詳細は覚えていないけれど、ワイパーのウォッシャーポンプがきちんと働かなくて、ウォッシャーが出てこないのだ。これはかなり厄介な問題だった。問題そのものは、例えばエンジンがかからないとか、ブレーキが利かないよりは遥かに小さいといえる。けれども走行中の視界が悪くなるというのは同等の問題だろう。何しろ危ない。

自分で修理を試みようと思ったけれど、部品を交換するとかなりのお金を取られるし、補修用のジェネリック別売ポンプも売っていたけれど、どの程度の勢いでウォッシャーが出るか不明だった。次善の策として詰め替え用のスプレーボトルにウォッシャーを入れて、ワイパーを動かすたびに窓を開けてスプレーするという離れ業を習得した。

出勤して数回した後だろうか。高速道路の途中でエンジンが止まりやがった。まだ辺りが暗い高速道路の途中で止まるのは危険この上ない。私はこの車の売主を呪いながらエンジンの再始動を何度も試みた。幸いエンジンは息を吹き返して無事に何とか職場へとたどり着くことが出来た。

このピックアップトラックは結局、約14万円で私に落札された。大して説明されてはいなかったが、ガソリンタンクは左右に二つもあってそれぞれ75リットル入るということと、バッテリーは新品でイケイケだぜと言う事だった。まだ買ったばかりだったのでガソリンはとりあえず40リットル入れておいた。テロリストさんは「早めにガソリンを入れておけよ」と繰り返し言っていた。

通勤時間は高速道路を使って片道30分なので一日1時間の運転。高速の往復は100キロ計算だからリッター10キロとして、ガソリンは一日10リッター。週5日勤務なので最低50リッター入っていれば週末まで持つ計算だ。まあ念には念を入れて2日走った後に満タンにしてみた。

今度は満タンにしたので二日分のガソリン20リッターを、40リッター入れた後に差し引くと残り20リッター。満タンにするのでこれまた計算上は55リッター入るはずだった。ところが給油機のメーターを見ると75リッターと出た。あれっ?するとタンクに入っていたのは買ったときから予め入っていたガソリンが殆ど無かったということになる。

そんなはずはない、きっとタンク右側とダンク左側の切り替えを間違えていたに違いない。それにしても両タンクを満タンにすると、ガソリン1リッター150円としたら22500円もかかる計算になる。


気のせい気のせいと思いつつ次号へ進む。



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