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「病床」の5類型(精神病床・療養病床・結核病床・感染症病床・一般病床)

Written by 病院建築note(医療機器出身のゼネコン社員)

日本の病床数は1,596,953床です。(厚生労働省2020年11月発表)
人口1,000人当たりの病床数は世界のOECDの主要7カ国中で圧倒的に多くなっています。2025年問題の記事でもこの点に触れました。

この記事では医療法で定められている「病床の5類型」について書いていきます。病床数のデータは厚生労働省の医療施設動向調査から抜粋しています。

病床の5類型

①精神病床324,921床(20.3%)


精神病床は病院の病床のうち、精神疾患をもつ患者が入院する病床のことです。アメリカやイギリス、ドイツといった諸外国と比べて、日本は 精神病床数が多いのが特徴です。

精神病床が多い理由は精神病院の利益構造や法整備の歴史など複雑なため、別の記事にしたいと思います。

②療養病床292,060床(17.2%)


主として長期にわたり療養を必要とする患者のための病床です。介護療養病床を含むので、医学的な管理が必要な患者もいます。

③結核病床4,147床(0.2%)


結核患者を入院させるための病床です。 結核病床は一般病床の設備に加えて、機械による換気システムや感染予防のために必要な遮蔽施設、消毒設備などを備えている必要があります。

④感染症病床1,886床(0.1%)

感染症法に規定する1~5類感染症の患者を入院させるための病床です。

感染患者・感染疑い患者については原則として「感染症病床」に入院させることになります。感染症病床は感染症患者が入院しているとき以外は原則として空床にしておくこととされるが他に転じて使うことも可能とされています。

「コロナ病床」とはコロナ患者専用の感染症病床を指します。
当初は感染症指定医療機関の感染症病床と、感染症病床以外の病床がコロナ病床として確保され補助金の対象でした。

その後の感染拡大により、感染症指定医療機関以外の病床も厚生労働大臣の要請を受けた場合には、コロナ病床として補助金の対象になりました。

コロナウィルスは2021年2月の感染症法改定により指定感染症(位置づけられていない新しい感染症)から新型インフルエンザ等感染症に変更されています。

「新型インフルエンザ等感染症」は感染法上の1~5類の分類とは別に設定され、危険度が2番目に高い2類相当です。

現在保健所や医療機関の負担を軽減すため、5類への格下げが議論されていますが「公費負担でなくなる」というデメリットもあります。

逆にメリットは感染回復後や濃厚接触した場合の「自宅待機なし」、患者の動線を分ける必要がないので、かかりつけ医などで対応可能になることが挙げられます。

⑤一般病床(①~④に当てはまらないもの) 887,468床(55.5%)


「地域包括ケア病棟」「回復期リハビリテーション病棟」の病床は精神、療養、結核、感染床のいずれにも当てはまらないため、「一般病床」です。

また手術など急性期治療を終えた患者が入院するのも一般病床としてカウントされます。

※①~⑤それぞれの病床は前提として
・人員配置基準(医師・看護師・薬剤師等)
・設備基準(消毒施設・給食施設等)
・建築基準(病室の面積・廊下幅等)を満たす必要があります。

■日本の病床数は世界一


日本の病床数は1,596,953床です。(厚生労働省2020年11月発表)
人口1,000人当たりの病床数は世界のOECDの主要7カ国中で圧倒的に多くなっています。
みずほ情報総研レポート「我が国の一般病床数の推移とその背景」

https://www.mizuho-rt.co.jp/publication/report/2018/pdf/mhir16_bed.pdf

によると下記の背景があるそうです。

■国民皆保険の実現しているため


日本は1961年に国民皆保険を実現しました。
これにより医療機関へフリーアクセス(保険証があれば、自由に公的保険を使った医療を受けられる)が可能になっています。
しかし、国民皆保険を実現したものの、山間地域や離島などでは医療施設の整備が追いつかず、「保険あって医療なし」の状態が見られました。

そのため医療施設整備に公的資金が投入され、その整備が進められました。

■患者負担の縮減により医療へのアクセシビリティが改善されたため


現在医療機関を受診した場合の患者負担は一律3割になっていますが、1961年当初は国民健康保険は5割負担、被用者保険では本人無料・家族は5割でした。

1960年代から1980年代初頭まで、健康保険はほぼ一貫して患者負担が低下するように改正されたため、増加する医療需要に応えるため、病床が増加していきました。

■1985年の医療法改正で「必要病床数」が策定まで病床数は増え続けた。


このような背景から病床数が増加して病床数の充足感が強い地域が多くなりました。また国民皆保険が実現したのは1961年(60年以上前)のため、高齢者人口が増加して社会保障費が増加しています。

このような状況で必要以上の病床を規制するため、1985年に都道府県毎に「必要病床数」が策定されます。この病床規制が病床増加のトレンドを一変させました。

策定直前までは「駆け込み増床」が活発化したものの、以降は減少に転じました。

それでも外国と比べると日本の病床数は圧倒的に多い状態が続いています。

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hospital architecture note
mail:07jp1080@gmail.com
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