ジュニア君に告げる明日


「ジュニア君はきっと治る」をお読み頂き、誠にありがとうございます。

マウソックは、なぜJAC阻害剤をおもったのか・・
そのお話しの前に、ジュニア君の今を連載でお伝えします。
この連載では、日々、「ペットを飼う」ということを考えさせられているマウソックのその時々の感情を率直に記載しています。表現に疑問もあることながら、どうぞ宜しくお願い致します。


ジュニア君はいま・・

ジュニア君は、現在も、毎日痒みと戦っています。
回復したり、痒みがまた出たりを繰り返すたび、投薬と休薬を繰り返していましたが、ある日を境に劇的に悪化しました。

体調がよくなったのをきっかけに大好きなアーモンドの欠片を渡しました。

2〜3日、徐々に掻痒行動が増えてきたため、2021年6月13日投薬を再開。
それから、3週間経過しても、いつもなら治まる掻痒行動が治まらず、2021年7月3日動物病院受診。

食物アレルギーが原因ではない

今まで診療してくれた獣医師は、事情により欠勤していたため、代理の獣医師が診療してくれました。
「いや、これはアレルギーが因子の痒みじゃない、これは、別の因子を考えないといけない」
獣医師は、特発性の皮膚疾患の可能性を話始めた。
ににちゃんのときの、光景がよみがえる、ああ、病院を変えたのに全く同じことを言っている。
多少の不安が、嫌な予感を招きました。
「痒みが走り出すとそれが、止まらなくなる。痒みを止めてほしい」
マウソックは、絞り出すように言うと、獣医師は、効かないステロイドを入れ続けるのはよくないので、薬を変えると言った。
マウソックの不安がなぜか加速した。「いずれ皮膚生検も視野に入れるがいまはそこまでを想定していません。」これは、違う、と感じるだけである。焦り、いら立ちそればかり。違うと思う根拠を説明できない。このままでは、ジュニア君が苦しむ未来しか見えてこない。獣医師の説明に信用より不信が勝る。「助けたい。必ず」マウソックは、願いを口にした。そして、痒みは止まるのか念押しすると、「これで様子をみましょう」と、獣医師は言った。

信じよう、決意を促す穏やかな声と微笑みだった。


不安

会計の時、看護師は、こともなく、告げた。
「これが、痛みを止めるお薬ですね。お大事に。」

マウソックは、尋ねた。
「痛み?痒みじゃなくて?」
「はい・・先生がそのように・・」

服薬しても治まらない掻痒行動。アレルギーじゃないという獣医師。以前とは違う薬。こちらの薬のほうがいいのかもわからない。
「わかりました。」

帰り道、ひたすら言い聞かせた。大丈夫、大丈夫。痒みは止まるから。
ジュニア君に、自分自身に。


夕方服薬。そして、真夜中3時頃。
なんとなく気になり、ジュニア君のお部屋を開けて、ジュニア君の様子をみました。
「え・・なんで・・」
そこには、毛がとれ、表皮がはがれ、内皮が一部むき出しになっているジュニア君がいました。とても痒かったのだと思います。
体も赤く、体温も高かった。


マウソックは激怒した

マウソックは、心の内にあった気持ちを夜中に一人で怒鳴り散らしました。
あれほど言った、慎重になってほしい、痒みを止める薬を慎重に調薬してほしい

どうして、なんで、どうして、私の言うことを真剣に聞いてくれないのか、
聞いていたなら、なぜ、数時間でここまで悪化するのか、どうして、自分の臨床経験だけで、判断するのか、信じられない、症例に合わせて、変更できるからこその臨床経験ではないのか、なぜ、症例に合わせて慎重に段階を踏むことがどうしてできないのか、薬は本当に正しかったのか、あれほど、こうなってからでは、遅いといったのに。

朝、ジュニア君を小脇に抱え、自宅をでました。午前6時半。向かったのは、動物病院。
どうしても許せなかった。聞く耳を持たず、自分の臨床経験だけで進めたことに傲慢を感じずにはいられなかった。


獣医師は青ざめて立っていた

マウソックは、静かな待合室に入ると、ジュニア君にお水をあげました。
ジュニア君は、マウソックを見上げると、こくこく水を飲み、また鋭い爪で
掻き立てました。

だめよ。掻いたら。
マウソックは、静かに言うと、ジュニア君は、マウソックの顔を見上げました。
痒いんだよ。とても。
マウソックは、コントロールの効かない痒みとたたかう小さな黒毛のマウスを見つめました。
ごめんね、ほんとうに・・力がないね・・
言葉も、要領も、機転も、知識も、すべて、つまり、能力が、圧倒的にない。

そんな人間が言いうことは、所詮、わめいたぐらいで、何も伝わらないということか・・気が付いていたけれど、認めたくないからいつも誤魔化しているけれど、最後は、結局、後悔。こんな繰り返しの飼い主では、ペットは、生きていけない。ほしいのは、ただ能力。どうすれば得られるのか。

そのとき、その静かな待合室の扉が、カランコロンと音を立てました。振り向くと、青ざめて呆然と立ち尽くしながら、こちらを見つめる獣医師がいました。

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