【短編エッセイ】アイスコーヒーを淹れる時間
喫茶店で働いていた頃、アイスコーヒーを淹れる時間が好きだった。
1Lをこえる大きなサーバーの上に、特大サイズのドリッパーを置き、やかんで淹れていた。やかんの口はわざと狭くしてあり、お湯が細く出る。
高いところから、なるべく細くお湯を落とすのがコツだ。高さと細さで、濃ゆいアイスコーヒーができる。
お湯を少しずつ出すため、どうしても時間がかかる。しかも接客しながら淹れる。だからアイスコーヒーを淹れるのは大抵、お客さんが少ない夕方。
誰もいない空間で、1人、アイスコーヒーと向き合う。この時間がたまらなく好きだった。
サーバーにぽつぽつとアイスコーヒーが溜まり、それを眺めては、聴いては、また淹れる。じっくりと淹れるほど、時間はゆったりと進む。
淹れ終わったアイスコーヒーはプラスチック容器に流し入れ、業務用冷蔵庫で冷やす。夏は時々、休憩時間に飲んでいた。
アイスコーヒーを飲むと、そんな日々を思い出す。
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