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恐怖が支配する世界からの解放と姉妹の絆 映画「カラーパープル」 #340

スピルバーグ監督にとって初めての社会派ドラマとなった映画「カラーパープル」。主人公のセリーは、外の世界を知ることができない境遇にいます。それが、息子の嫁や夫の愛人、妹からの手紙によって世界を知り、ようやく自分の境遇が「異常」だと気がつく。

比較対象を得たことで、ガラリと変わる。その、心の成長がとても美しい映画です。

<あらすじ>
1909年。ジョージアの町はずれに住むセリーは、2人目の子どもを出産します。父親は、母の再婚相手。妹のネッティを心の支えにしていましたが、近くに住むミスターと結婚させられてしまいます。ミスターには4人の子どもがおり、セリーは朝から晩まで彼らの世話をすることに。ある日、父親から逃げてきたネッティがやって来ますが、ミスターにレイプされそうになり、追い出されてしまう。姉に「手紙を書く」と言い残しますが……。

原作はアリス・ウォーカーの小説で、ピューリッツァー賞を受賞しています。第58回アカデミー賞で、作品賞を含む10部門でノミネートされました。セリーを演じたウーピー・ゴールドバーグは、これが映画デビュー。もちろん、アカデミー賞主演女優賞の候補にもなっています。

父から性的虐待を受け、夫となった男から殴られ、自分は「醜い」と思いこんでいるセリーは、いつも口に手を当てて隠しています。笑う時も、困った時も。

身分は自由黒人ですが、まるで夫であるミスターの奴隷のようです。郵便ポストはミスターが支配しているので、妹からの手紙が来ているかどうかも確認できない。

ミスターの長男が結婚したソフィアは、強く自分を主張する女性です。手を焼く長男に「殴れば言うことをきかせられる」とアドバイス。これは、自分がやられたことなんですよね。

恐怖が支配するセリーの「絶対服従」の人生を変えたのは、そのソフィアや、夫の好きな歌手シャグの影響でした。夫の支配から脱した後、セリーは口元に手を当てることがなくなります。こんな小さな仕草からも、彼女の成長が見てとれて、ウーピー・ゴールドバーグの演技力を感じました。

わたしが一番疑問だったのは、映画のタイトルである「カラーパープル」の意味するものです。いろいろ調べても、はっきりした説明がなく、しっくりくる解説も見当たらず。

「カラー」という言葉は、おそらく肌の色を指しているのだと思われます。でも、なぜ「パープル」なのか。

そこで気づいたのが、映画のオープニングとラストを飾る、紫色のコスモスの花でした。

映画は紫のコスモスが咲き乱れる草原で遊ぶ、セリーとネッティ姉妹の姿から始まります。セリーが嫁いだミスターの荒れ果てた家で、掃除を始めた時、壁をこすって現れたのは白い花。窓辺にピンク色の花を飾ったりしていたセリー。恋人に会いに行くミスターの手にあった花束も、やはりピンク色でした。そしてラストシーンでは、再び紫色のコスモスの花。

コスモスの語源はギリシャ語の「Kosmos」で、これは「美しい」「宇宙」「調和」という意味を持っている言葉だそう。花言葉は「乙女の真心・謙虚・調和」。

「乙女の真心」を持つセリーの40年にもわたる忍耐。人間として扱われなかった女性が自立し、精神的な奴隷状態から解放される、自分自身の「調和」を描いた映画だと考えてみると、ようやく納得がいきました。こじつけですが。笑

「カラーパープル」。久しぶりに観たけど、やっぱりいい映画でした。難点は、154分もあること!


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