ロスノフスキ家

和解は最大の励ましに 『ロスノフスキ家の娘』 #153

いっとき、「家系図」をつくることが流行りましたよね? 試しに検索してみたら、いまでも代行サービスがいっぱいあって数万円からできるそうです。

先祖はなにをしていた人なのか? どんな暮らしをしていたのか?といったことを知るのは、現在の自分を知ることにもつながるのではないかと思います。

ポーランド移民の父を持ち、聡明で、裕福な暮らしをしていたフロレンティナは、ある時、家族の秘密を知ってしまいます。父の血塗られた過去を知り、苦しむ彼女を支えたのはリチャードという青年。でも彼の父親は、自分の父の敵だった……という小説が、ジェフリー・アーチャーの『ロスノフスキ家の娘』です。

こちらは昨日ご紹介した『ケインとアベル』の続編です。フロレンティナの誕生から父・アベルの死までの数十年は重なっています。

親からみた物語が『ケインとアベル』だとすると、子からみた物語が『ロスノフスキ家の娘』。そしてリチャードとの出会いとフロレンティナの挑戦が、『新版 大統領に知らせますか?』につながります。

実は『ケインとアベル』は最後にとんでもないどんでん返しが待っている小説です。真実を知った時、本を落とすくらい震えて、涙しました。

なので、『ケインとアベル』→『ロスノフスキ家の娘』→『新版 大統領に知らせますか?』の順に読むのがいいです。いい、というか、絶対!

父に似て負けず嫌いで、がむしゃらに自分の道を切り開いていくタイプのフロレンティナは、紆余曲折を経て下院議員に立候補します。下巻で繰り広げられる「アメリカ型選挙」は一番の見どころです。

もうね、スキャンダル、実弾、なんでもありなんですよ。

アーチャーの他の作品よりも、はっきりと「女性の自立」を描いているのが特徴かな。さりげない会話の中にちりばめられた真実は、一見、イギリス風のユーモアなのか?と感じますが、それがちゃーんと伏線になっています。

アメリカの上流社会でおこなわれる子弟教育には、ちょっと意外な一面もありました。親子のすれ違いはどんなふうにして起きるのか。親は子どもに愛と自由を与えているつもりでも、子どもにとっては呪縛になっているかもしれません。でも、呪縛は和解によって解ける。そして最大の励ましになります。

この本はじっくり、ゆっくり読むのがいいですよ。


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