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やられたらやり返すだけでは終わらない 「番人!~もう一度、キミを守る~」 #266

「目には目を。歯には歯を」

これ、「やられたらやり返せ」という意味だと思っていましたが、「同等の仕返しは許されるが、度が過ぎてはいけない」という“規制”なんですね。争いの拡大を防ぐための法律だったのだとか。元はラテン語で lex talionis (レクス・タリオニス、同害復讐法)というそう。

「やられた分だけ」ならやってもいい、というのもアレですが、権力者に陥れられた場合は、そう簡単にやり返すこともできません。

法では切り込めない相手に、裁きを受けさせる手段はないのか?

法に代わって悪を裁こうとするドラマが「番人!~もう一度、キミを守る~」です。

<あらすじ>
刑事のスジは、女手一つで幼い娘を育てるシングルマザー。12年前の事件を不審に思い捜査を進めていたところ、検事のドハンから捜査中止の圧力を受ける。同じ頃、スジの娘が屋上から転落し死亡。失意の中、謎の情報提供を得たスジは容疑者を発見するが、検事長の息子だったため、またしてもドハンにもみ消されてしまう。自らの手で裁きを下そうとしたスジは、警察に追われる身となり……。

検察という組織の中で、出世しか考えていないドハンは、ホントは何者なのか。ナゾの組織“番人”とはなんなのか。ドラマの冒頭は謎だらけです。

キム・ヨングァン演じる検事のドハンは、チャラ男そのもの。イ・シヨン演じる刑事のスジと対立を繰り返します。この、スジが。格闘技の達人らしいのですが、なかなかに「ダイ・ハード」な刑事で、ツッコミどころ満載。

一方で、“番人”グループは、天才ハッカーのギョンス(SHINeeのキー)と、ソウル中の監視カメラを操るボミ(キム・スルギ)。彼らも過去に事件に巻き込まれたことがあるようで、すべての謎が検事長に向かっていくというストーリー。

驚くのが韓国の監視カメラの多さです。韓国の刑事ドラマを観ていると、必ずでるセリフが「監視カメラを確認しろ」なんです。

幹線道路、学校の教室、通路、ビルの入り口、コンビニなどなど、あらゆるところにカメラがあります。韓国情報化振興院が発刊した「2015情報化統計集」によると、韓国に設置された監視カメラは約800万台と推計されています。日本はというと、日経ビジネスの推計では、2018年の段階で500万台ほど。

韓国では、元々は児童虐待の防止策として設置された監視カメラ。ですがドラマの中でカメラが映しているのは、「lex talionis」な社会です。

「やられたらやり返せ」ではなく、「やられた分だけ」。争いの拡大を防ぐには、どこかで悪縁を絶ちきる必要があります。権力者に有利に作られた法律は弱者を守ってはくれません。ましてや恣意的に解釈を曲げられてしまえば、手を出せなくなる。

だからといって、私的な復讐が許されるとは思えないんですよね。

「法では切り込めない相手に、裁きを受けさせる」小説といえば、池波正太郎の『仕掛人・藤枝梅安』シリーズがあります。こちらでは、蔓と呼ばれる仲介者を通して暗殺依頼が持ち込まれました。

シリーズ執筆時に「殺してもいいほどの悪人を考えるのが大変」と語っていたそうで、池波先生も私的な復讐には否定的だったのかも、と思います。

最後に信じられるのは、人か、組織か。

カーチェイス、肉弾戦、ハッキングと、現代的な三種の武器でドラマが展開していきます。全16話でサックリと話が終わるのもよきですよ。

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