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ショービズ世界の裏側には生きる知恵が詰まってた 『素人力 エンタメビジネスのトリック?!』 #136

人生万事塞翁が馬。

「人生の幸不幸は予測できないものだ」のたとえで、「やっちまったぜ!」という失敗が、後に大成功につながるかもしれないという意味です。

制作会社と聞くと、テレビのドラマやクイズなどの番組を作っているところ?くらいしかイメージできなかったのですが、堤幸彦監督らが所属するオフィスクレッシェンド代表・長坂信人さんの著書『素人力 エンタメビジネスのトリック?!』に、その実態が綴られています。

1980年代のこと。要領が良くて、人当たりも良くイジられキャラだった長坂さんは、アメリカで秋元康さんと知り合います。その後、オフ・ブロードウェイのミュージカル企画会社「SOLD OUT」を立ち上げた秋元さんは、長坂さんにひとつの肩書きをくれました。

プロデューサー。

ショービズ経験も、ビジネスの経験も、現場経験もないのにいきなり。笑

そんな“素人”プロデューサーは、「SOLD OUT」のメンバーが帰国して立ち上げた会社オフィスクレッシェンドの代表を務めることになります。

オフィスクレッシェンドに所属しているのは、堤幸彦、大根仁、平川雄一朗ら、そうそうたるメンバーです。

でも、堤幸彦らが監督を務め、仲間由紀恵や阿部寛がブレイクするきっかけとなった深夜ドラマ「TRICK」は、当初3000万円の大赤字だったそう。

理由は、監督たちが良い作品を作りたいと、豪快にロケを増やしたため。

思わず笑ってしまいそうですが、テレビの番組製作は基本的に受注商売・下請け商売なので、ドラマがヒットしても成功報酬が出るわけではありません。社長として現場を掌握できていなかったと反省する長坂さん……。

制作会社の利益率は、予算の10%から15%パーセントくらいなのだそう。そこから、ギャラを支払い、会社を運営していくわけです。そこで3000万円の持ち出しは、ヤバいですよね。

ショービズ経験も、ビジネスの経験も、現場経験もない長坂さんの強みはただひとつ、“素人力”です。

特に会社立ち上げ当時は若さもあって、たいした自信がなくてもえいやと決めることができた。大企業のトップよりも、若い頃の方が「決断力」はあるはず、と語っています。

なかなかのぞくことができないショービズ世界の裏側。そして生きる知恵。ちょっとくらいの失敗で凹んでいてはもったいない!と思える本です。おすすめ!

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