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愛すべきマヌケ男の起こした事件 映画「ストックホルム・ケース」#513

やることなすこと、ちょっと間が抜けている。今度こそ、と思っているのにうまくいかない。これほど愛すべき人物はいないんじゃないだろうか。だってそれは、精一杯日々を生きている“わたし”の姿だから。

映画「ストックホルム・ケース」の主人公ラースが、まさにそんな人物でした。

<あらすじ>
ストックホルムの銀行に押し入ったラース。3人を人質に取り、刑務所に収監されていた仲間のグンナーを釈放させることに成功。アメリカに逃れるため、金と逃走車を要求するが、警察が彼らを銀行の中に封じ込める作戦に出たことで事態は長期化してしまい……。

心理学用語「ストックホルム症候群」の語源となった事件の映画化です。「ストックホルム症候群」とは、誘拐事件などの被害者が、犯人と心理的なつながりを築く心理現象のことだそう。

史実とはちょっと違うそうで、映画ではビアンカをはじめ、銀行員3人がラースの人質となります。そして徐々に協力関係を築き、警察の目を欺いて逃走の手助けをするように。

なぜ、そんな心境になっていったのか。

映画では特に「これ」と分かる形では示されないんですよね。ただ、観ていて感じるのはラースには「悪意」がまったくないことです。だから人質になっている銀行員たちも、協力する気になったのではないかなと思います。強いストレスにさらされてはいるけれど、「この人は自分を傷つけることはない」と信じられたのではないでしょうか。

そんな信頼関係を築けるまでの過程が、ユーモアたっぷりで笑わせてくれます。

特に「アメリカ人風」を強調した扮装で銀行に押し入るラースを演じたイーサン・ホーク。やることなすこと間が抜けている。彼の前科がまたすごくてですね。

民家に強盗に入る → 主人が心臓発作を起こす → 介抱して命を救う → 新聞に載る

こんな愛すべき「悪人」には、なかなか出会えない気がします。

そんなラースと心を交わし、積極的に協力する銀行員のビアンカは、「ミレニアム」シリーズのノオミ・ラパスが演じています。「ミレニアム」の人だって、ぜんぜん気が付きませんでした……。

「ストックホルム・ケース」のノオミ・ラパスはこちらの女性。

ストックホルム・ケース1

「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」のノオミ・ラパスはこちら。

ミレニアム

違いすぎる……。

ビアンカはラースに頼んで自宅に電話をさせてもらったり、夫と対面したりしています。その時の会話がまた笑ってしまう。

ビアンカ「冷蔵庫に魚が入っているから……」
夫「なにを言っているんだ!?」

一瞬、何かの暗号なのかと思ってしまいました。主婦として、母として、一番伝えたいことは「食事」の心配なんですね……。

ヒューマンドラマとクライムコメディを掛け合わせた、絶妙な塩梅の映画です。愛すべきマヌケ男を堪能できますよ。

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