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本屋は本を買うだけの場所じゃない 『日本の小さな本屋さん』 #530

本屋さんで大泣きしたことはありますか?

わたしはあります。待ち合わせはだいたい本屋さんにするくらい、本屋に行くことが習慣のようになっていて、行きつけの本屋さんも複数あります。でも、今年の4月。ほとんどのお店がクローズする中で、うちの周辺の本屋さんも当然休業に。

東京だから本屋さんなんていくらでもあると思っていたけれど、実はチェーン店が多く、商業施設に入っているところが多かったんだと、あらためて気がつきました。つまり、「行きたいのに開いていない」状態だったのです。

5月頃、仕事で出かけた先の商店街で、一軒だけ開いているお店を見つけました。

本屋さんだ!!!!!

棚に並んだ本は少なくなっているけれど、わずかに漂うインクの匂い。カラフルに並ぶ雑誌の棚。いままで見たことがなかった釣りの雑誌や、NHKの教材をながめ歩く。文庫本なんて、抱きしめたくなりました。

ああ、わたしは棚に並ぶ本が好きだったんだ。ずっとずっとこの光景が見たかったんだ。

そう思ったとたんに、ドバーッと涙が出てきて、大泣きしながら店長さんとおしゃべりして、さらにふたりで泣きました。この頃、本が入荷せず、棚はスカスカに。それでもお店を開けていてよかったと店長さんは語っていました。個人商店だからできた決断だったんですね。

ふたたび「東京脱出」が難しい状況になってきたので、旅行気分で『日本の小さな本屋さん』を開きました。「BOOKSHOP LOVER」の活動で知られる和氣正幸さんによる、日本全国の小さくて個性的な本屋さんを集めた本です。

わたしの友人は本好きの本屋さん好きで、地方の本屋さんのお手伝いに行き、そこに泊めてもらうこともあると言っていました。さすがにひとみしりにはそんな芸当はできない……。でも、この本を開けば、想像するのは自由。いつか行った、そしていつか行ってみたい本屋さんに出会うことができます。

写真がまたいいんです。インクの匂いと、ホコリの匂いと、紙をめくる音と、チリンチリンなんていう自転車のベルが聞こえてきそうです。

日本の小さな本屋さん2

日本の小さな本屋さん3

(画像はAmazonより)

この本を見ていると、本屋さんって本を買うだけの場所ではないのだと感じます。棚に並ぶ背表紙をながめているだけで世界旅行も可能だし、時空だって超えられる。地域のコミュニティになることもあるし、サードプレイスになることだってある。

旅行したい欲と、本屋さんに行きたい欲。今年一番できなかった願いを、両方いっぺんに叶えてくれる一冊ですよ。

「BOOKSHOP LOVER」のサイトはこちらです。国内外のインデペンデントな本屋が紹介されています。



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