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雪の中に浮かぶ激しい愛のかたち 映画「男と女」 #455

韓国では「キス王子」と呼ばれている俳優コン・ユ。手が大きいせいか、キスするときに相手を包み込む手から伝わってくるんです。相手を愛おしく思っている気持ちが。

わたしが観た中で、コン・ユ最高のキスシーンだなと思っているのが、「トッケビ~君がくれた愛しい日々~ 」でした。女子高生役のキム・ゴウンの愛らしさがそのまま伝わってくるドラマです。

「トッケビ」ではやさしいキスを披露していたコン・ユですが、相手がオトナの女優であり、しかも演技派チョン・ドヨンとなると、かなり激しいものでした。もちろん映画の話で、「男と女」という作品です。

<あらすじ>
ヘルシンキで出会ったサンミンとギホンは、大雪の誰もいないキャンプ場の森の小屋で体を重ね合う。互いの名も知らぬまま別れた2人だったが、それから8カ月後、ソウルで日常に戻っていたサンミンの前に突然、ギホンが現れる。

チョン・ドヨンは不思議な女優だなと思います。典型的な「美人」タイプではないのに、スクリーンの中にいると目が離せなくなるんです。そして、演技にハンパがない。「シークレット・サンシャイン」で、カンヌ国際映画祭女優賞を受賞している女優です。

「男と女」では、自閉症の息子とともにフィンランドに渡る、という母を演じています。韓国に戻れば「社長」という肩書きがあるものの、誰ひとり知り合いのいないヘルシンキではひとりぼっち。偶然出会ったギホンと関係を持ってしまうのです。

コン・ユ演じるギホンもやはり、ひきこもりになってしまった娘と共にヘルシンキで暮らしていたのでした。

ふたりとも、韓国での家や暮らしぶり、仕事の様子を見ると、「勝ち組」ともいえそうな洗練された環境にいます。なのに、埋められない心のすき間がある。

儒教思想を受け継ぐ韓国では、目上の人や高齢者に対してはやさしいけれど、障がいのある人にはやさしくないと聞いたことがあります。親として子どもの障がいを受け入れられない姿は、そんなところからきているのかもしれませんね。

作家の本田健さんは、著書の中で20代のうちにすべきことを挙げていました。

「キャンセル待ち」をしてでも、死ぬほどの恋をする。

サンミンとギホンは共に家庭のある身でありながら、逢瀬を重ねていきます。ふたりの「キャンセル待ち」は届くのか……というストーリー。特に、コン・ユの愛し方は

(それ以上いったら、ストーカーや……)

と感じるほどの熱烈熱血系です。

男と女2

イ・ユンギ監督とは「素晴らしい一日」に続いてのタッグとなったチョン・ドヨン。「過去のない男」でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞したカティ・オウティネンとの共演シーンは必見。セリフはなく、雪の中でふたりがタバコを吹かすだけなんですが、ものすごく、いろんなことを想像してしまいました。

女の心に去来するのは、愛する男の顔か、我が子の顔か。

常に「あったかくて紳士」な役を演じてきたコン・ユの、激しい愛情表現を堪能できる映画です。

(画像はKMDbより)

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