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韓国映画のパワーが爆発するクライムサスペンス 映画「殺人者の記憶法」 #519

人気の映画には、後で「ディレクターズ・カット版」が出てきます。ハリウッド映画の場合、映画の最終的な編集権を持っているのはプロデューサー。営業成績を重視するプロデューサーと、自身の芸術性を重視する監督との意向がぶつかり合った時、作られることが多いのだとか。

「ブレードランナー」や「未知との遭遇」など、版がいくつあるねんというものもありますし、「ターミネーター2」のジェームズ・キャメロン監督のように、ディレクターズ・カット版を「おまけ」と評していることも。

名優ソル・ギョングがアルツハイマーの殺人者を演じた映画「殺人者の記憶法」には、「新しい記憶」というバージョンがあります。通常版も十分に「ギョエー!」な映画なのですが、3か月後に公開された別バージョンは、結末が異なるという凝りようです。

この映画はまさしく韓国映画のパワーを感じさせてくれるものでした。注目ポイントを3つにまとめてみます。

<あらすじ>
かつて連続殺人を犯した獣医のビョンスは、いまはアルツハイマー病に侵され、記憶がおぼろげになっていく日々を送っていた。あやふやになる記憶への対処のため毎日の出来事を録音するように。ある日、ビョンスは、偶然出会った男テジュの目つきに、テジュが自分と同じ殺人犯であるという確信を抱く。やがてテジュはビョンスのひとり娘ウンヒのそばをうろつくようになり、ビョンスはひとりでテジュを捕らえようとするのだが……。

「殺人者の記憶法」注目すべき理由その1:ソル・ギョングの役作りがハンパない

韓国を代表する名優ソル・ギョング。どちらかというと生きるのに不器用な役を演じることが多くて、「オレの辞書に“ライフハック”という言葉はない」という感じのする俳優です。

普段はこんな感じなんですけれど。

殺人者の記憶法3

役に入るとこうなっちゃう。もはや別人。減量によってシワシワ感を出し、顔をけいれんさせて病の深刻さを表現。すべてを「演技」で超えていく俳優なんです。

殺人者の記憶法2

「君の誕生日」という映画だとこうなる。

君の誕生日1

大好きな映画「オアシス」のどうしようもないほどのやさぐれ男が一番好き。

オアシス

「殺人者の記憶法」注目すべき理由その2:キム・ナムギルの役作りがハンパない

若手のセクシーイケメン俳優としてならしてきたキム・ナムギル。この映画ではテジュ役の不気味さを表現するため、体重を14kgアップさせて臨んだのだとか。アドバイスしたのは、もちろんソル・キョングなのですが。彼は10kg以上の減量をしていた……。撮影現場では、お腹を空かせたソル・キョングの横で食べまくるキム・ナムギルという絵が見られたそう。つらい。

殺人者の記憶法4

ワルセクシーな感じを発揮した「ワン・デイ 悲しみが消えるまで」。まさに韓国製ジョニー・デップです。なのに「テジュ」ではセクシーに加えて計算高さと凄みをみせるんです。背筋がヒエッとなりました。

ワン・デイ

「殺人者の記憶法」注目すべき理由その3:結末が予測不能

最初に書いたように、この映画にはふたつの結末があります。キム・ヨンハのベストセラー小説を、脚本・ファン・ジョユン、監督・ウォン・シニョンで映画化。コン・ユが韓国版ジェイソン・ボーンとなった映画「サスペクト 哀しき容疑者」の監督です。

最初に公開された通常版がすでに

「ギョエー!」

となるばかりだったのです。そして10分ほどのシーンが追加された「新しい記憶」は。

「ギョギョギョギョエー!」

となりました。

絶対ネタバレできない系の映画で、この結末は予測不能でした。今思うと、この映画が日本で公開された2018年は、他にも「コンフィデンシャル/共助」や、「タクシー運転手 約束は海を越えて」が公開されて、韓国映画復活の兆しがみえた年だったなと思います。

この映画での演技力が評価されたキム・ナムギル。最新作「クローゼット」が、今週12月18日から公開されます。お相手は、「神と共に」シリーズのハ・ジョンウ。

韓国でも大作の公開延期があったりしてバタついた2020年。今年はとうとう映画を観に行けなかった……。早く自由に行き来できるようになりますように。そのために、手洗いと消毒を徹底します。

(画像はすべてKMDbより)

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