ギャングが強盗に入って追われちゃったというだけの話がなんでこんなに怖いの 映画「狩りの時間」 #300
「パラサイト 半地下の家族」がアカデミー賞で4冠を達成したことで、韓国映画を観てみようという人も「ちょっとだけ」増えたように思います。作品賞の受賞スピーチで、
「韓国の観客はとても厳しい。だからわたしたちは常に努力しないといけなかった」
という話が出ていました。超スペクタクルな制作をするドラマ現場で力を磨く人、インディペンデンス作品で関心を集める人。映画業界でのし上がっていくのは、そう簡単なことではないんだろうなと感じます。
韓国映画アカデミー(韓国の国立映画学校)の卒業作品として制作した「Bleak Night」でデビューし、各映画祭の新人監督賞を総なめにしたユン・ソンヒョン監督。9年ぶりの長編映画が「狩りの時間」です。
<あらすじ>
刑務所を出たジュンソクを待っていたのは、家族同然の仲間ジャンホとギホン。国家が経済破綻したため、スラムと化した町を出て、新しい人生を始めようとします。資金作りのために賭博場を襲ったものの、正体不明の追撃者に追われることになってしまい……。
韓国で2月26日に封切り予定だったものの、新型コロナウイルスによって延期。3月下旬になって制作会社が「劇場公開はせずにNetflixで全世界190カ国に配信する」と発表し、日本でも4月10日から配信されています。
この決定が波紋を呼び、韓国ではちょっとした騒動になっていました。現在は和解して、配信も開始になりましたが、せっかくつくった新作が上映できないのは、制作会社としてはつらい。配給会社もつらい。配信料金の数%で基金をつくって映画館に回すことはできないのかしら……。
ちょっとケチがついてしまった気がする「狩りの時間」。ストーリーは「ギャングが強盗に入って成功したけど追われる」という、それだけの話なんですが。
めっちゃ、怖いよぉぉぉーーー!!!
強盗に入るまでは、若さゆえの無茶が暴走するクライムストーリーなのですが、その後は“人間狩り”サスペンス。ずーっと緊迫した空気が続きます。音楽がさらに緊張感を高めてくるので、一度はミュートして観たくらい。しかもユン・ソンヒョン監督、照明の使い方がめちゃくちゃうまい。
逆光に浮かび上がる影なんて、「ターミネーター」みたいでした。
キャスティングされた俳優たちも、次世代を担うと期待される面々です。
ギャングのリーダーであるジュンソクを演じるのは、「建築学概論」などで注目されたイ・ジェフン。
3人組の中のひとりギホンは、「パラサイト」で長男役を演じたラッキーボーイ、チェ・ウシクが演じています。
ぜんそく持ちで、銃に不慣れだけどマシンのことならお任せなジャンホを演じたのはアン・ジェホン。
3人組の悪巧みに巻き込まれてしまうサンスを演じるのは、パク・ジョンミン。
ストーリーや映画としての完成度は「うむ?」と感じるところもありました。でも、未来のない町で夢をみる男たちの友情には、爆発的なエネルギーを感じる。
この先が楽しみになる俳優と監督がそろい踏み。いまのうちにどうぞ!
(※画像はKMDbより)
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