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本は必需品なのです 『まちの本屋』 #533

消費税の生みの親は、フランスなのだそうです。そのフランスでは、生活必需品にかかる税率は低めに設定されています。普通なら19.5%もするけれど、食料品や交通機関だけでなく、本や映画・コンサート、美術館などは5.5%。

本は嗜好品ではなく、必需品なのです。

ですが、街に書店が1軒もない自治体が増加しているそう。わたしが子どもの頃に住んでいた町にも本屋さんはありませんでした。まー、これは田舎だったからかもしれないけれど。いまでは420の自治体、行政区には本屋さんがない状況。この数字は今後ますます増えていくのかもしれない。

岩手県と秋田県の間にある町で生まれ、本屋の息子として育ち、店を継ぎ、そして店をたたんだ経験を持つ田口幹人さん。著書の『まちの本屋』には、盛岡にある「さわや書店フェザン店」の店長として、「本屋」はどんな場所であるべきかが綴られています。

「さわや書店フェザン店」は、盛岡駅の1階にある本屋さんです。ど派手なPOP、暑苦しいほどの推しの言葉で有名になりました。

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このPOPに惹かれて本を買い、そして泣きながら読んで。同じ名前の奴隷少女「ハリエット」の映画も観て泣きました。

こういう出会いがあるから本屋通いは止められないんです。探したい本がはっきり分かっているときは、ネット書店の方が便利でしょう。それでもリアルの「本屋」に行ってしまうのは、やっぱり本屋さんが「この本を売りたい」と思って並んだ棚を見る楽しみがあるからです。

本を読まない人が増え、市場の縮小が叫ばれても、それでも続いている出版という事業。その最前線にある本屋さんだからこそいえる言葉に、チリチリと胸を刺されるような思いをしながら読みました。

田口さんはもうこのお店にはいらっしゃいません。別の場所で、本を届けることに取り組んでおられるそうです。続編の『もういちど、本屋へようこそ』も読みながら、本の現場に想いを馳せました。


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