真剣勝負にみる男の意地 映画「神の一手」 #408
「この世は強い者にとっては遊び場。弱い者には生き地獄だ」
人生にはこのふたつしかないと笑顔を浮かべる師匠。勝負師とは思えない穏やかな表情で、焼酎を飲み干す。
く~~っ、かっこいー!
賭け囲碁の世界を描いたサスペンスアクション映画「神の一手」は、俳優たちのケミストリーが張り詰めた空気をつくり出していて、思わず見入ってしまいました。
<あらすじ>
兄を助けるために賭け囲碁に手を出したプロ棋士のテソク。しかし、元締めであるサルスに騙され、兄を殺されてしまう。殺人の罪を着せられたテソクは、獄中でナゾの男に囲碁の腕前を鍛えてもらい、ヤクザの親分からケンカを教わる。肉体と精神を鍛え上げ出所したテソクは、復讐を開始するが……。
復讐に燃える男テソクを演じるのは、チョン・ウソン。兄を陥れた詐欺の一団に立ち向かうため、刑務所の中で身体を鍛えたんですよ。ムキムキに。
(画像はKMDbより)
囲碁で使うのって、頭と腕くらいじゃないの!?と思っていのに、勝負を賭けた世界というのは恐ろしいところですね……。短刀の突きを流す体さばき、拳で狙う箇所などのアクションは、囲碁の攻撃と近いのかも。イ・ボムス、チェ・ジニョクらのワルっぷりにもしびれます。
「ここで引いたら男が廃る」と後に引けなくなっていく様子が、ギャンブルの恐ろしさを映し出しているようでした。
だってマイナス30度の冷凍庫で一局ですよ。もう止めとき……と何度も思ってしまった。
テソクの仲間となり、チームを導く「師匠」はアン・ソンギが演じています。盲人のホームレスだけど、囲碁がめっちゃ強いという設定。名優アン・ソンギの穏やかさが勝負師の顔に変わる瞬間がみどころです。
アン・ソンギは8月に公開された「ディヴァイン・フューリー/使者」で、バチカンのエクソシスト(悪魔祓い)を演じています。こちらでも若い俳優たちに囲まれ、精神的な支柱となる役割。
アン・ソンギもいよいよ「ヨーダ」の域に来たのか~!
と感じる名演技です。
そして、テソクが獄中で対戦した「ナゾの男」こそ、昨日ご紹介した「鬼手」。映画のラストは、ここにつながっていきます。
どちらも囲碁を舞台にしたノワール劇ですが、映画の原点をたどっていくとたどり着くのは「タチャ〜神の手〜」なんです。こちらは賭博の達人たちの真剣勝負の物語。「サニー 永遠の仲間たち」のカン・ヒョンチョル監督作品とあって、よりエンタメ感強めです。
経営者には麻雀が強い人が多いそうですが、囲碁も大局をみて戦略を練るゲームです。「相手よりも大きな陣地を囲ったほうが勝ち」で、簡単にいえば、陣取り合戦のボードゲーム。それがこんなにバイオレンスな物語になるなんて。
ギャンブルの恐さとゲームの醍醐味を味わえる映画です。
(画像はすべてKMDbより)
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