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政治に小さい声が届いた話

こんにちは、あきほです。辻昌歩です。
今日は政治にちょっと声が届いた話をしようと思います。
最近色々メディアに出て、全然違う憶測での情報とかが出回りすぎてるのと(誹謗中傷もある)、自分で状況整理したいな〜と思ったからです。


今回は「学生支援緊急給付金」の創設にあたって、声を届けたことによって奨学金に関する今までの慣習を打ち破って、結果セーフティネットが拡大するのに繋がったという話をします。
あとなんで私が声を上げ続けているのか、という話もします。


▶︎背景

まずは私の背景から。
慶應義塾大学総合政策学部3年生。一人暮らし。
学費は日本学生支援機構の貸与型奨学金を月に12万(MAX)借りてる。家賃光熱費食費などはアルバイトで工面。扶養を抜けて、国民健康保険料も自分で毎月払う。親からの仕送りはなし。
大学1年生の夏に家庭内で色々あり、1年生終わるまでに引越し初期費用を貯蓄し、2年生になるタイミングで一人暮らしを始める。同居もできないし、経済的に両親を頼ることはできない。
大学院に進学する予定のため、就活はしていない。博士課程卒業後に借金がいくらあるかとか考えると落ち込むだけだから最近は考えないようにしている。

▶︎日本の奨学金制度について

奨学金には①返済不要の給付型と、②卒業後返済が必要な貸与型の2種類がある。窓口は大学独自の奨学金、民間奨学金、日本学生支援機構の3つに分けられる。それぞれ成績や経済状況など要件は異なる。
ただ一つだけ原則全ての奨学金に共通すること。それは、経済状況の判断は生計維持者の収入によって判断されるということ。この「生計維持者」というのは基本的に両親のことを指す。これは両親ともに死別したりでもしていない限り、原則両親。学生本人が扶養をぬけても世帯を分けても自分の生計を自分で維持していても、両親の収入によって判断される。
そうすると、何らかの家庭事情によって親からの仕送りを受けていない学生は、経済的に困窮していながらも、本来セーフティネットであるべき奨学金の要件からこぼれ落ちてしまっている、という落とし穴が現実問題として起こっているのである。

この落とし穴を埋める兆しが見えるのに少し協力できたかもしれないのである。


▶︎3月

3月26日。
友達の紹介で自民党の議員さんと知り合う。学生の今の状況を説明して驚かれる。人生で初めて議員の人と話す。奨学金の給付/貸与条件の判断基準は世帯(親)の経済状況であるため、親に収入があり自分には収入がないような学生はセーフティネットから抜け落ちてしまっているという話をする。私みたいな普通の大学生の声を聞いてくれる国会議員の人がいるということにびっくりしたし、すごく嬉しかった。私くらいの子を呼んで話を聞かせて欲しい、と言ってくれる議員さんは今までいないと思っていたけど、そうじゃないのかもしれないと思えた。後日、その議員さんの秘書さんの紹介で、通信社の記者さんと、週刊誌の記者さんと知り合う。2人ともとてもいい人。週刊誌の記者さんは政治のことについてメールとかで分からないことを聞くととても丁寧に返してくれるのでとても好き。

▶︎4月

4月6日。
緊急事態宣言発令とともにバイトがなくなる。
収入の半分以上を支えていたバイトが消えたことにより、生活が立ち行かなくなることが判明。絶望。

4月14日。
全21編のnoteを書き始める(現在はプライバシーのために非公開にしてあります)。公開2週間で15万ビューを超える。

4月23日。
noteをみた国民民主党の議員さんから突然TwitterでDMが来てめちゃくちゃにビビる。27日夜に会うことになる。
大学の先輩の紹介で立憲民主党の学生オンラインヒアリングに参加。バイトの休憩時間に参加したためご飯食べながら話してた(了承を得た)。参加していた議員は、枝野幸男代表、蓮舫副代表、塩村あやか参議院議員。学生への支援をするにあたって、世帯給付はやめてほしいと伝える。



4月27日。
TBSのNews23のスタッフからnoteに公開してあるメアドに突如メールが来て出演して欲しいと言われる。バイトの休憩時間にメールを確認し、電話。当日夜には放送したいとの事だった。事前に約束していた通りバイト後、国民民主党の議員さんに状況を話す。その後迎えに来たTBSのスタッフの人と赤坂へ向かい、収録。村瀬さんめちゃくちゃいい人だった。研究テーマの話をしたら、中東にいたことがあるらしく話が弾んだ。そして当日夜に放映される。お弁当貰った。赤坂からタクシーで帰らされて2万近くのメーターを見てすごいびっくりした。
翌日28日の予算委員会で、立憲民主党の大串博志議員が答弁中に前日のニュースのことを取り上げていたと週刊誌の記者さんから連絡が来る(この週刊誌の記者さんは質問を丁寧に返してくれるだけじゃなくて、私が何かメディアに出ると見たよ!とか、何かどこかで引用されると話されてたよ!って連絡してくれるのでとても好き)。アーカイブで見ると本当に話していてびっくりした。
29日の予算委員会でも答弁で国民民主党の玉木雄一郎代表が学生支援をするにあたって7億円の予備費は少ないと訴えたところ、萩生田光一文科相から7億円はあくまで最低ラインであるとのことで返答された。

▶︎5月

5月1日。
立憲民主党の学生ヒアリングに紹介してくれた大学の先輩から、自民党の学生オンラインヒアリングにも出て欲しいと言われて参加する。主催は自民党青年局。参加していた議員は小林史明青年局長、白須賀貴樹青年部長、小野田紀美学生部長、宮路拓馬同副部長、鈴木貴子総務・広報副部長(すべて当時)。同じく世帯給付ではなくて、個人を見て判断してほしいと訴える。


5月8日。
公明党の新型コロナウイルス感染症対策本部長の斉藤鉄夫幹事長と浮島智子文部科学部会長(すべて当時)が萩生田光一文科相に感染拡大の影響で経済的に困窮する学生の学業継続断念を防ぐため、2020年度補正予算の予備費を活用して1人10万円の現金給付を行うよう求める緊急提言を申し入れ。

5月11日。
予算委員会で公明党の高木美智代議員と国民民主党の玉木雄一郎代表が学生支援への迅速な対応を政府に要望。この頃毎日予算委員会のアーカイブをチェックしていた。


5月13日。
小林史明議員と宮路拓馬議員が「新型コロナウイルス対策における学生向け支援策」について岸田文雄政調会長(当時)に申し入れ。申し入れの文書内に「特に『家庭から自立した学生』が、新型コロナウイルス感染症の影響で突然アルバイト収入等が減ったことにより『学びの継続』の危機を迎えている状況に対して、より早く現金が手元に届く新たな給付措置を検討すること。」との文字を発見して嬉しくなる。



5月19日。
「学びの継続」のための『学生支援緊急給付金』」に関する資料が文部科学省のHPから公開される。




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給付対象となる要件に、私が訴えた「世帯じゃなくて個人で判断してほしい」というのがしっかり加味された条件が組み込まれる。※(1)参照
これに伴い萩生田光一文科相が記者会見を行う。

5月27日。
オンラインヒアリングに誘っていただいた先輩から連絡が来る。27日当日の閣議の内容を踏まえて、今回の学生支援についてNHKが学生の声を取材をしたいとのことだった。同日夕方にオンラインで取材をされ、ニュース7で紹介される。

5月30日。
慶應義塾大学で学生支援緊急給付金の受付が開始される。自分も受給対象になる。

▶︎6月

6月6日。
News23を見たTBSのスタッフさんから電話が来て、「上田晋也のニュースな国民会議」に出演。最後の数秒だけしか話せなかった。学生支援について数秒だけ話す。交通費は出る。お弁当も出る。みんなに聞かれるけど出演料はない。それでも少しでも多くの人に学生の現状が届いて欲しいから出演した。

▶︎9月

9月24日。
オンラインヒアリングに声をかけてくれた先輩から電話が来る。朝日新聞の人が取材したいと言っているとのこと。詳しい話が党本部の人からされるらしいので連絡先を立憲民主党本部の人に渡してもらう。すぐに電話が来る。「政治に私たちは見えていますか」という枝野さんが最近の会見とか代表演説で引用していたのは私の言葉だということを知り驚く。このことについて朝日新聞の人が取材したいと言っているらしい。

9月25日。
朝日新聞の記者さんから連絡が来る。取材日程を30日に決める。

9月30日。
朝日新聞に国会記者会館で取材される。てっきりおじさんが取材に来るのかと思いきや、割と若い女の人だった。その後、記者会館の屋上で写真を撮られる。風が強かった。初めて首相官邸を上から見た(たぶんもう一生見ることはないと思う)。カメラマンのおじさんは周りの建物の説明とかしてくれるいい人だった。記者さんが「ご飯いこうね、赤坂おいしいお店あるから!」と言ってくれて嬉しかった。こまめに連絡くれるいい人。

▶︎10月

10月11日。
以前出演した「上田晋也のニュースな国民会議」のスタッフさんから電話が来る。今度は24日にまた番組があるとのこと。学生支援など若い人向けのことをテーマにするらしいのでまた出演してほしいとの連絡が来る。

10月20日。
朝日新聞の記者さんから連絡が来る。記事は22日の夕刊に掲載されることが決まったという。原稿を見て何点か修正していただく。

10月22日。
朝日新聞の夕刊に取材記事が掲載される。ネット記事のURLが記者さんから届く。有料会員限定の記事だったため、原稿全文も送ってくださった。その後、夕刊の紙面イメージが送られて来る。1面に掲載されていて驚く。記者さんも「私も1面だとは思わなかった」と言っていた。実際の夕刊も紙面で2部郵送してくださった。

10月24日。
TBS「上田晋也のニュースな国民会議」に出演。前半が子育て世代、後半が学生支援に関する内容だった。後半のトップバッターとして参加し、前回よりはたくさん話せた。「学ぶことを応援する社会になってほしい」というメッセージも伝えられた。

10月27日。
秘書さんからの紹介で、Change Academia主催の『日本の財政とアカデミアの未来について考える勉強会』に参加する。参加したのは自民党の安藤裕議員、中西啓議員、中村裕之議員と、黄川田仁志議員。
「今回の学生の意見を踏まえて、3人(黄川田さんは質疑応答時間より前に帰っていた)の議員の先生方が、明日からこうします!っていうのがあれば、今日ここに来てよかったなと思えます。」と伝えたところ、「自民党の文部科学省の部会で言います」との返事を頂けた。「ただし、3人とも任期が浅い『若手』と言われる議員であるため、船の舵を一気に変えるまでの力がないのが申し訳ないが、しっかり声は届けます。」と言ってくださった。

10月28日。
衆議院の本会議で立憲民主党の枝野幸男代表が、代表質問の冒頭で「政治に私たちは見えていますか?」と学生に言われた、と言っていた。「親からの支援を受けずに自力で頑張っていた大学生」とは紛れもなく私のことだった。本会議で言われたということは、衆議院の議員さんみんなに私の気持ちがちょっとでも伝わったのではないかと思えた。



▶︎なぜ声をあげ続けるのか

先に言っておくと、私が色々なメディアに出ているのはやらせでもなんでもないです。どこか特定の団体とかに所属している訳でもないです。どこかの回し者とかでもなんでもないです。
ここまで書いた通り、はじめは友達や先輩の紹介とかたまたま私のnoteを読んだとかで、一度メディアに出ると色々なまた別のところから声がかかるようになる、ということです。

話していて思ったのは、メディアの人や議員さんが知り合いの大学生が全然いないんだな、ということです。働いてる大人は周りにいますよね。同年代のことならSNSとかで見るし、聞かなくてもどんな感じかだいたい想像はつくと思います。けど10才20才離れてる人や、その人たちを取り巻く状況がどんなのか、想像できる人は少ないんじゃないでしょうか。接点がなければ「知らない」「分からない」「想像できない」というのは余計深まるばかりだと思います。
だから、大人の人に「今学生はこんな状況です!」というと、大抵「今の学生がこんな状況だとは思わなかった」「自分たちが学生の時と状況が違いすぎる」と言われます。
その度に思います。

「ああ、知らないだけなんだな」

私は将来大学院に進学する予定です。こんな風に政治系のことでメディアに露出すると就活で落とされるとかネットで叩いてた方、ご安心ください。私はそもそも就活をしません。
そしてゆくゆくは大学の先生になるのが将来の夢です。簡単なことではないけれど、研究してお金をもらって、常に若い人と議論しあえるって最高だと自分の大学の先生たちを見て思っています。でも、そんな時。私の教え子に一人でも苦学生がいたら私は自分が苦学生でありながら、その辛さやしんどさをそのまま次の世代に残してしまった大人として生きていくことになるのは絶対いやだ、と思いました。

よく「自分も苦学生だったからおまえも我慢しろ〜」みたいな風に言ってくる人がいるんですけど、苦しかったならなんでその状況を変えようとしないんですか?っていつも思っています。「若いうちの苦労は買ってでもしろ」っていう大人もいるんですけど、それは自分が望んでするならわかるけど、強制されるものではないと思います。
「なんで国公立にしなかったんだ、私立を選んだのはおまえだ」という人もいます。そもそも、私は教えてもらいたい先生、また普通ならゼミに1つしか入れませんが、ゼミを複数入って組み合わせて自分の研究にできる、しかも1年生からゼミに入れるという普通の大学にはない環境があり、どうしてもSFCに通いたくて入学を決めました。日本の大学の約8割は私立大学です。他の大学や学部に同じ先生、同じカリキュラムはありません。経済的な理由で本当に行きたい大学にいくのを諦めろ、というのは違うんじゃないかな、と思います。
「バイトのお金が足りないなら水商売や風俗で稼げばいいじゃないか」と言ってきた大人もいます。これは私が女子だから言われたのかもしれないのですが、子どもに水商売をすすめる大人の倫理観ってどうなんでしょうか。たしかにお金は稼げても、情動労働によって得た心や体の傷が簡単に癒えることはないです。
「お金がないなら大学に行くな」という人もいます。そしてこの言葉を投げかけてくる人が一番多いです。一番ショックを受けます。家庭にお金がない、家庭からお金をもらえない、地方に住んでいて情報が乏しい。子どもは生まれてくるときから親や家庭や教育環境や地域を選べる訳ではないです。もし選べるなら誰だってお金持ちで、家族の関係も良好で、色々な機会や情報の多い都心部の家庭に生まれることを選ぶと思います。でも全員が全員そんなラッキーなわけではありません。サイコロを振ったらたまたまそういう状況だっただけです。

たしかに、大学は義務教育ではありません。でも私は「人生の夏休み」と呼ばれる大学生生活や、就職のためのネームバリューが欲しくて大学に入った訳ではないです。純粋にこの大学で勉強して研究したい。ただそれだけです。お金がなくても、親からの仕送りがなくても、どうにかして奨学金とアルバイトで生活を維持している大学生のほとんどは、それでも「学びたい」という気持ちが強いから大学にいるんだと、同じような状況の子と話すたびに思います。

そのために奨学金がある。でもその奨学金の要件には明らかに穴がある。金額が足りない。給付型の奨学金が少ない。返済できるかが不安で諦めてしまう。大卒の初任給が平均20万、手取り16-18万円で、そこから奨学金の返済に2-3万円とられたら生活できるのか不安になります。奨学金を返済できないという人のニュースを見るたびに落ち込みます。結婚できるのか、子どもを産んで育てることは出来るのか、お金がなかったら無理だな、自分の子どもにも奨学金を借りさせて貧困ループが続いていくんじゃないかと暗くなります。せめて機会とそのための経済基盤のスタートラインを同じにしてほしい。

そのために何かできることはないか。
私は政治家や官僚の人じゃないから直接制度を変えたり、政策を提言することはできません。篤志家の人みたいに出資するお金がある訳でもありません。私には発信することしかできません。でも発信し続けたら、声をあげ続けたら変わる時がある。それが今回の「学生支援緊急給付金」の要件なのではないでしょうか。

声をあげてくれる学生が増えること、学生の声をきいて実行に向けて動いてくれる大人が増えること、そして何よりも「学びを応援する社会」になってくれることを切に願います。

2020年10月29日
辻 昌歩



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