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妄想リスニング#4 Black Midi "Cavalcade" × UA "Sun"

ポップであることって、何だろうか。
わかりやすくても何か物足りない感じがしたり、難しいものだとわかっていてもなんだか好きで、ずっと気になってしまうものがあります。

どんな要素がポップであることの中核なのかを明言することはなかなかできないものです。
ある決まった要素によって物事がポップになることはなく、でも確実に目に見えない奇跡のバランスのような形で存在し、人を魅了します。
もしかしたら狙わずしてできた偶然かもしれないし、磨きに磨いて構築したものかもしれない。
それすらわかりません。
ただひとつ言えることは、"研ぎ澄まされたセンス"のようなものを必要として、それは確実に繰り返される修練の末にアウトプットされるものであるということだと思うんです。
文化もそういうもので、長い時間の中でいろんな人がいろんなことを考え、揉んだりこねたりして、さまざまな要素を含んでいき、ある時ひとつのところにそれが集約される、その状態がポップであると言えるんじゃないかな。

black midiを初めて聴いたとき、その印象はまるで知らない土地の喧騒のような感じでした。
僕にとっては知らない場所を旅しているわけだから、その場所で日常起きていることはわからないんですが、その場所にいる人たちはいつものようにある日常が繰り広げられているだけ。
そういう感じなんです。
みんなはこんなの当たり前だと思ってて、僕1人だけがそれを知らず、ザワザワとしたカオスに包まれているように思える、そんな状態。
何が起こっているのかを冷静に考えたくて、しばらくその場にいると、いろんな秩序がクリアになってきます。
ぐちゃぐちゃのように思えた要素がひとつところに集まって、すごくカラフルでワクワクするような形になっていることに気づくんです。
あ、これがポップだということか!、となります。
最初から最後まで、僕はこの世界観の中で旅行者であり、異国に来たことをずっと楽しんでいます。
聴き終えてもまだ現実に戻れない気がして、ずっとそのことが気になっていました。

さて、4回目となるこの妄想リスニングで、black midiの"Cavalcade"と繋がるのは、UAの00年代初頭のアルバム、"Sun"です。
これまでにもUAはジャズやコンテンポラリー、民族音楽の要素をたっぷりと含んでいましたが、この"Sun"のおけるその含有率はMaxといっていいでしょう。
コンテンポラリージャズとインドネシアのガムランが混じる、まるで熱帯雨林の中にいるようなサウンドスケープで、スコールのように歌うUAの歌声は呪術のように聞こえますが、なんだか一緒に口ずさんでしまうんです。
知らない土地の知らない音ばかりに包まれた、どこか懐かしく温かいUAの声は、間違いなくポップの中核です。

知らないものを知る楽しさがどちらのアルバムにもあって、聴いているだけなのに、いつのまにか違う世界に放り込まれる不思議な力を放っています。
これぞ、ポップ!
癖になりますね。

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