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「フィリップ、きみを愛してる!」感想

モーリスリバイバルから、LGBTものを再確認していたのだが、たぶん上映時期は自分がうつで、劇場では見られない時期だったかもしれない。
未確認というか、ジム・キャリーとユアン・マクレガーがLGBTものとは正直結びつかなかったのである。
私の中で、ジムは勿論「マスク」からの大活躍(時にはやりすぎな程)、
ユアンは「トレインスポッティング」のイメージなのである(スターウォーズじゃないのよ…、観てないし…←)
ずいぶん古いまま更新されていない私の映画情報なのだが…、本当に劇場に足運んで観ていなかったんだな…、と再確認。

さて、こちら実話(!)を元にした作品で、冒頭テロップに「ほんとだってば」と出て、観始めるとほんとにほんと??マジで??なスティーヴン(ジム)の人生。

自分を捨てた母親を探すため警官になったスティーヴンなのだが、それ以外は人生好調、結婚し子供もいる。が、実は彼はゲイ、家族には内緒でちょこちょこつまみ食いをしている。
そして、職権乱用で母親を見つけ出すものの、母親には当然といえば当然なのだが、拒絶されてしまう。
これ、たぶん彼の今後の人生で顔をのぞかせる「自分が何者か分からない故にやりすぎてしまう」事に深く関係していると思う。
そして、つまみ食いの後、交通事故に逢った彼は「自分に素直に生きること」をモットーとし、ゲイである事をオープンにする。
ここでの救急車に運ばれるやり取りはさすがジム、笑っちゃいけない状況なのに、笑ってしまう。いや、もう笑っていいんだ、これ、ジムだし!!

そして、ゲイとして生きる事を決めた彼は、「ゲイはなにかとお金がかかる」と、あらゆる事で金を稼いでいく。
映画では分からなかったのだが、実際の彼はIQ169もあり、人を騙すことも口八丁手八丁、頭がフル回転、周りは馬鹿に見える程なのである。
当然金を稼ぐも、捕まり刑務所に入ることになる(昔警察官だった為どういった所か分かる為、ものすごく抵抗するけど)

しかし頭の良い彼、すぐに刑務所の作法にも慣れ、新人にレクチャーするほどになる。(すぐ、アレを○○○ること、って言うけど、まあ実際そうなんだろう)
そこで、金髪ブルーアイのフィリップ(ユアン)を見かけひとめぼれ、もう少女マンガでも見かけない、背伸びしても取れない本を取ってあげる、というシチュエーションで、フィリップにも我々にもきゅんきゅんさせてくれる。
困っていそうなフィリップに弁護士と偽ることで、フィリップの心をどんどん掴んでいくスティーヴン、もうひとめぼれからすでに口説きにかかり、しかもフィリップも満更では無い所か、房を移るので残念、と言ってくるぐあい。心がっちり掴んだのである。
その手腕も見事なのだが、ユアン演じるフィリップのなんと、キュート!!な事。
この製作年(2009年)から考えて、ユアンもそこそこな年齢のはずなんだけど、どう見てもキュートな金髪ちゃん!かわいすぎか!!
役柄のイメージから可愛いというイメージではなかったけど、どっからどう見ても、乙女!!可愛い!!この100万分の1でも私に乙女感があれば…、ないけど。役者ってすごい…、とまた思わされる事になった。

房を移り、でも手紙のやり取り(あー青春)をしながら、お互いを語り合っていく二人。しかし、途中手紙の返信が来なくなり、涙目(かわいい)になるフィリップに、同室に移ってくるスティーヴン。
どういう手を使ったのか分からないが、やはりやり手な事を伺わせる。
その後はもう、二人よかったね!!エピソードばかりなのだが、煩い隣部屋の男を暴行(させた)疑惑で、スティーヴンは他に搬送されてしまう。
ここは、もう見所で、どう見てもゲイの為、狙われるのが嫌で普段は中庭には出ないフィリップが中庭まで出て、搬送されるスティーヴンに「愛してる!!」
スティーヴンも「フィリップ!愛してる!!」
うわー、もう、終わってもいい、ここで!!(ダメ)

三ヶ月で出所したスティーヴンは、今度フィリップを出所させる為、頭をフル回転、そして弁護士としてフィリップを出所させる事に成功、
かくして二人は一緒に住めるようになるのだが、フィリップの大家の訴訟をすることとなり、この辺りは本当にジム・キャリーの独壇場といえよう。
なんか良くわからない状態で、あれよあれよと進み、とうとう大きな家まで手に入れるスティーヴン。
全ては、フィリップに楽をさせてあげる為、困らせない為。
この、愛情を物に換え相手にあげる、というのは、やはり幼少の頃実母に捨てられている、という事が関係しているとは思う。相手に捨てられないように、愛情という目には見えないものを物に換える。相手(フィリップ)もそれは別に望んでいなくても、だ。
そこに「人よりよく廻る、周りが馬鹿に思えるほどの頭脳」を持っているのだから、お金を稼ぐためその頭脳が悪い方へいってしまうのは、当然だったのかもしれない。
この辺りは彼の持っている資質と、環境が組み合わさってなってしまったのかな、と思う。

結局、また捕まる訳だが、今度はフィリップもまた巻き込まれる形となり、散々彼の人のよさを利用され(刑務所に入ったのも多分罪かぶらされたんだと思う)「君もまた僕を利用するのか!」と言われ、
見ているこちらも「あー、そうじゃないんだ…、結果そうなったけど…」とほんと苦々しい気持ちに…。どちらの気持ちも分かる。
お人よしすぎて人に利用されつくした男と、捨てられたという過去から自分自身が何者であるか分からない為、愛情を物に換え与えてきた男。

喧嘩別れとなり、別々の刑務所送りとなった彼らだが、今度はスティーヴンの様子がおかしく、あげくげっそりと痩せている。
これが、冒頭シーンとなる訳だが、そこからはどうなったのか、見てほしい。
本当に馬鹿だ、としか思えないし、ここから先はほんと泣いた。
ただ、このとんでもない男スティーヴンを憎めないし(そこはまたやりすぎジム・キャリーがキュートに、そして押さえる所は押さえて演じていた)、
惚れられあげく題名にまでなっているフィリップも、正直どういう気持ちなんだろう…、という気がしなくもなく。
(劇中、ご本人がカメオ出演しています、探してみてください)
愛は人をバカにする、とは別の映画の感想でも書いたが、
これこそ頭いい人間がやる究極のバカだ、と言いたい。
そして、これを観て、きっと「これ本当に本当に実話!?」って言いたくなると思う。
テーマとしてもっと重く描くことも出来たと思うけど、テンポ良く詐欺やってはつかまる男の愛たるや!?って事に重点を置いて描いた事、
誰が見ても「これは…守ってあげたい」というユアンの役作りのおかげで違和感無く物語りに入っていけたこと、観て良かった作品だった。


※ゲイカルチャーに疎いので、分からないのだが、劇中仕事の付き合いでゴルフに行くスティーヴンに、フィリップが「ゲイなのに!?女を抱く方がマシ」と言っていたのだが、ゲイはゴルフをしない?の?
まあ、カミングアウトしてなかったけどさ。
接待ゴルフって、あちらでもあるのね、そういう付き合いをしないって事?なのかしら。

※あと、フィリップの服がダサい、かわいい、萌える。





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