サービス産業(フィットネス業界)の経営企画に転職して読んだ本~サービス産業の経営戦略の実行とDXが学べる本~

2020年1月にフィットネス企業の経営企画室に転職しました(正確には経営企画室ではなく社長室所属ですが、分かりやすさから経営企画室と表現しました)。中国子会社の立ち上げと経営、国内事業のデジタル化を担当しています。

ECアプリのPdM->モバイルペイメントアプリのマーケティング企画->日系企業のデジタル支援(@中国)のエンタープライズ営業というキャリアなので、リアル店舗を持つ会社で働くのは初めてです。IT企業と事業モデルや組織図も大きく違い、マネジメントで必要となる要素も違うことが多いです。

また今まではIT企業に所属もしくはDX推進を外から支援する立場でしたが、自らがDXを推進する立場になり、整理されたべき論の提示よりも、実行に重きが置かれる環境になりました。

分からないことが多く、以下の問いを答えるために入社2ヶ月くらいでインプットしてきた本を紹介しています(これから読んでいく本も入れています)。同じ環境の方の参考になれば幸いです。

・サービス産業とはそもそも何か?
・サービス産業ではどのような経営の論点があるか?
・経営企画とは何か?
・戦略の実行をどう担保するか?
・サービス産業でのDXとは?
・DX推進で具体的に必要なスキルセットや人材像は?

「新卒メガITベンチャー(呼称が良くわからないですが世間一般的にはこう呼ばれていそう)からレガシー業界での経営企画&デジタル推進」という今後増えそうなキャリアパターンな気がしているので、その参考にもなれば幸いです。


サービス産業における経営

サービス産業における経営_サービス産業の科学

そもそもサービス業とは何か。モノとサービスの違いは何かなどを整理。

工学博士で、一般社団法人サービス産業革新推進機構代表理事内藤氏の著書。サービス産業の現場で使える理論を提案しています。現時点で、個人的にはサービス産業のバイブル的扱い。

同じ著者のものです。多くの事例が掲載されています。

サービス産業における経営_経営の主要論点

経営について論じた本そのものではありませんが、読書案内を通じてサービス産業の経営にはどのような論点があるのかが学べます。※この中で紹介されている本はこの記事では触れていません。

サービス産業における経営_経営企画の役割

経営コンサルタントが書いた企業復活ストーリーの小説。「そもそも経営企画がなぜ必要とされるのか」の説明がうまく言語化されていて、経営企画の役割を考えるのに良かったです。

上司や組織に対して感情を持ち込まず、合理的に捉えかつそれらを動かしていくかをブリジストンという巨大企業のCEOまで勤めた経験から書かれています。性善説を前提とするインターネット企業で育った人に刺さる内容だと思います。

ボストン コンサルティング グループ(BCG)の日本代表が経営の「意思決定」について解説した本です。どのように論点を設定するか、論点をどう潰していくか、意思決定までをどうスケジューリングするかなどを学べます。

サービス産業における経営_戦略と実行

店舗を構えて来店してもらう業態の場合、マーケット自体が一度成立してしまえば、画期的なアイデアよりもやりきる実行力がより問われるので、戦略をどう実行させるかが一番の論点になります。そして実行をどう管理するのかも大事な論点です。

心的安全性の議論よりもこっちを先にやりきらないといけないなと感じています。鶏卵の話かなと思いつつも。

戦略を実行する時のあるあるを経営学者が考察した本。戦略を実行に落とすためにどのようなコミュニケーションをすれば良いかも提案されています。

結果指標と先行指標の2軸でマトリクスを作成し、スタッフを可視化することの方法論を記載。特に営業活動によって顧客単価が上がる業態だと、スタッフが積極的に営業することが求められ、それの進捗管理に使えます。

今はエクセルで簡単なツールを作ろうとしていますが、いい感じのSaaS欲しいです。

スタートアップで主流のKPIやOKRなどの追うべき指標を絞る業績管理はサービス業であまり向いてないのではと思います。スタートアップの世界とは違いそこまで劇的な市場環境の変化があるわけではないので、追うべき指標の全体のバランスを取りながら業績管理をするのが大事なのかなと。この考えを表現するのに何か良いフレームワークは無いかと探していたところ、「バランスト・スコアカード」という概念にたどりつきました。その提唱者の本です。これから読んで業務に落とし込みたい。

「管理会計システムの本質として、人は測定されるとなぜ行動を変えるのかを主眼」に置き、会計の本質を考察する本です。日々行っている「業績管理」を言葉で表すとこうなるのかと発見が多い本です。

三枝匡氏の戦略(特にB2Bマーケティング)をテーマにした書籍。顧客をどう分類してセグメントを作るか、またそれらにアプローチするための営業管理ツールについてかなり実践的な方法論が書かれています。

サービス産業は、ホテルなど現場では単価を上げることが難しい業態と、フィットネスのように現場の提案力次第で単価をあげられる業態の大きく2つに分けることができます。後者は営業管理ツールがかなり効果を発揮すると思うので、うまく活用していきたい。

ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン会長 兼 パートナーが主に「実行」について定石を書き下した書籍。


DX推進

DXという表現を社内では使っていませんが、いわゆるDX的なことも担っています。

DXの前提については『ソフトウェア・ファースト』と『アフターデジタル』を読めば分かるかと思うので任せます。一般論としては『3ステップで実現する デジタルトランスフォーメーションの実際』を読めば十分でしょう。

DXへの3ステップ

批注 2020-06-14 105000

リアル店舗運営が肝なので、ITに詳しい人材は社内に少なく(そもそも必要なかった)、ベンダーに任せきりだったり、いわゆる「一人情シス」という状況でした。

今後どこまでを内製化するのか、部門の役割をどう定義するか、DXをどういったロードマップで進めるかを考える際に使った本を紹介しています。個人的には小売やサービス業におけるDXのステップは以下の3STEPになると感じています。STEP2を超えるには、既存業務オペレーションとシステムを理解し変革する人材やスキルセットが求められ、そこに焦点を当てています。

自分の中で、「DXを推進する=STEP2を実現する」ことと現時点では捉えています。

STEP0:顧客情報の一元管理
デジタル上での情報(Cookieなど)を集約するのは、現在ある技術でそれなりに実現できますが、難しいのはリアル店舗でのお客さんと接触した時の情報をきちんとインプットできるか。デジタル云々ではなく、オペレーション問題なのでSTEP0としました。

STEP1:顧客が触れる画面のUI/UXの最適化
これはアプリや動画対応など「マーケティング」チャネルに閉じた話です。あくまで側の話なので、外部に任せてもそれなりに実現できるでしょう。

STEP2:顧客にデジタル上でサービス提供を完結させる(もちろんUXを担保した上で)
STEP1はあくまでマーケティング・チャネルに閉じた話で、STEP2はサービスをデジタル上で提供します。小売だとECです。店舗在庫とEC在庫の連携が必要です。フィットネスだとオンラインでレッスン提供。この話になると、予約や在庫システム上にあるデータをリアルタイムで、デジタル上の複数チャネルに連携する必要がでてきます。数十年間スクラッチでベンダー頼みで開発してきたシステムに自分たちの強い意志で手を加える必要があります。
社内の業務オペレーションとも密接に関係するため、外部だけで完結しません。

STEP3:既存アセットを活用した新たな収益源の確立
STEP2の話が終わると、STEP3になると思いますが、STEP2の既存システムの変革が最も難易度が高く、多くの企業がここで躓き、DXがPoCで終わり進まない理由ではないかと思います。STEP3では業界構造を変えうるようなビジネスモデルの創出つまりイノベーションが求められます。日本のDX成功事例ではここの事例が多く紹介されがちな気がしますが、現実は既存システムをきちんと解きほぐし、使える状態にすること(STEP2)を乗り越えられず止まっているのかなと思います。

DX推進_業務改革

ビジネスはビジネスモデルとビジネスプロセスで分解できると解き、ビジネスプロセスを考えることの意義や構築手法について解説。DXの論点が「インターネットを使ったビジネスモデル刷新」から「業務をデジタル上に再構築する」へと移ったこのタイミングで、読みたい本。

三枝匡シリーズでも触れられていますが、1990年代にアメリカで流行った業務革新の必要性を論じた本。DXをBPRの再挑戦と捉え、当時なぜBPRがうまくいかなかったのか、当時と現在の環境要因の相違を考えるのに良書だと思います。

DX推進_経営・組織

CDOの前に「CIO」。

おそらく現時点で日本で唯一「CDO」に絞って書かれた書籍。前述の「CIO」とは何が違うか、なぜ今求められているのかを丁寧に解説しています。

DX推進_人材

DXを推進する人材像を明確にするために手に取りました。欧米だと定着しつつある「ビジネスアナリスト」という職種が最も腑に落ちています。

ビジネスアナリストはもともとソフトウェア開発の現場から生まれた職業で、主たる役割はソフトウェア要求を取りまとめることです。現状の業務を理解し、経営層やユーザーの意図を汲み取り、それらをソフトウェアへの要求という形に組み替えて開発部隊に伝える、つまり“プロジェクトに関わる各所とのコミュニケーションを仲立ちする人”として立ち回ります。最近ではシステム開発の場に留まらず、ビジネスプロセスの専門家として、ITを伴わない業務改善やBPOの現場等などでも活躍の幅を広げています。


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これらのうち、分析的思考、問題解決、行動特性、コミュニケーションのスキル、人間関係のスキルは、いずれもソフトスキルに分類できます(図ではピンク色に塗っています)。対して、ビジネス知識、ツールとテクノロジーはテクニカルスキルに分類できます(図では緑色に塗っています)。図で見ると分かりやすいですが、コンピテンシの半分以上がソフトスキルです。このように、ビジネスアナリストに求められるスキルは、ソフトとテクニカルの両方が必要とされ、またソフトスキルの比重の方がやや重いのが特徴です。

ビジネスをITに落とすための色々な手法が紹介されています。

ビジネスアナリストをより業務レベルで解説したもの。

DX推進_ITアーキテクチャ

ITアーキテクチャの理論と実践。30年情シスを経験した筆者が実践から得た企業のITアーキテクチャの策定について解説。全然消化しきれていないので、何回も読みたい。

EA(エンタープライズアーキテクチャ)の思想や、組織内での推進の仕方などについて解説。

SAPがエンタープライズアーキテクチャについて記した書籍。概念的な説明のみでどう実践するかについての説明は無いのですが、ERP大手のSAPがエンタープライズアーキテクチャをどう捉えているかを知るのに役立ちます。

DX推進_ERP刷新

DXを推進するに当たって、既存ERP(統合基幹業務システム)をどう扱うかというのは非常に大きな論点です。

ERPという概念が生まれた背景や、企業における位置付けなどをケーススタディとして整理しています。

ビジネスプロセスとERPについて詳しく書かれています。『MBAのためのERP』と比べると、より丁寧な言葉でページ数を割き、説明されています。

ERP導入に伴い発生する論点が整理されています。導入しなくてもERPを構成する業務システムを構築する際の参考になります。

パッケージソフトから業務知識を学ぶをコンセプト。ざっくり「会計/販売/生産/人事」の知識を学ぶのに適しています。

Amazonのレビューが非常に良かったので、そのまま引用させていただきます。

SAP社がBtoB企業としてここまでの地位を確立することができたのは、一種の先見の明があったからだと思います。
SAPがサービスを提供した当時は、デザイン思考やパーソナライズと言った考えは一般的ではなく、機械化標準化による大量生産を実現しようとする流れが強い時代巻だったと思います。
そんな中でSAPはデザイン思考をベースにしたERPサービスを提供したからこそ、それが差別化となり、現在における地位を確立したのではないか、というのが本著書を読んだ見解です。
しかしながら、昨今、デザイン思考が再注目され始め、顧客思考が強くなり、パーソナライズへのニーズも高くなっているのではないでしょうか。
つまり、SAPがこれまで強みとして持っていた要素が、普遍的なものへと移り変わってしまったわけです。
そんな中で、次の強みは何なのか?新技術なのか?新サービスなのか?という課題提起で著書は終わっています。
ERPサービスやSAPの課題感を知るにはいい本だと思いますが、解決策を求めている方には物足りないかもしれません。

DX推進_業務分析の具体的手法

業務を誰もが分かる形で可視化するにはどんなアウトプットが良いだろうということで、モデリングに一旦辿り着きました。

モデリングを使った業務分析の手法を解説しているのが本書。現場の業務を可視化してシステムに落とせる人材をまずは増やそうと思い(自分含む)、その研修本として2冊とも使おうと思っています。

業務の生産性を上げるためにどのような思考プロセスで進めたら良いのか?を教えてくれます。業務を構造的に捉えられる良書です。

業務フローとしてビジネスプロセスを描画する標準記法であるBPMN(Business Process Model and Notation)の解説書。業務フローそのものの書き方ではなく、BPMNそのものの解説書。


DX推進_データ分析基盤の整備

データ分析基盤の整備を行う業務で現在進行系で参考にしています。ビッグデータに関する多くの本が、ビッグデータを使って何ができるかに重きが置かれているのに対して、本書はビッグデータ分析をどう実現するかに焦点を当て、「データエンジニアリング」に特化して記載。どのサービスを選定すれば良いかなど実践的です。

DX推進_対ベンダーとの実務ノウハウ

エンジニアが社内にはおらず、ベンダーを使いこなすのは必須なので購入しました。

ベンダーとの関係の築き方やどのようなアウトプットを事前に用意すれば良い提案がもらえるかなど実務で役に立つTIPSが多いです。


DX推進_人事テクノロジー

DXの領域は多岐に渡り、人事も… こちらの本はHRテクノロジーで何が変わるのか、企業はどのような取り組みを進めているのかがまとまっていて全体像を掴むのに良かったです。

DX推進_DXの投資効果

IT投資を定量的に評価するために探した書籍。まだ読めていないのでこれから。IT投資を財務諸表でどう表現するかも今後考えたいところ。

AmazonでIT投資についての本を探していると、松島桂樹氏の書籍が多い。


自社が属する業界全体像を理解する本(フィットネス業界)

所属業界の理解ももちろん必要なため購入。2冊目は2006年と古いですがアメリカの多くの事例が紹介されていて良き。もちろん業界雑誌もあります。

フィットネスビジネス:https://www.fitnessclub.jp/business/


自社が属する業界の成り立ちを理解する本

ピラティスがメインの業態なので、ピラティスの本質に迫る本を読むのは、現場との言葉を合わせる上で必須と感じています。もしスポーツクラブ企業に属するなら、誰がスポーツクラブという概念を生み出したのか?などが理解できるインプットをしたいところです。

そもそも自社が提供するサービスを好きでないことには何も始まらないと思いますし、好きなら歴史とかも知っているはずだしということで、その業界の第一人者の本は一通り読み進めています。

ピラティスの歴史がまとめられています。

インストラクターに研修で課す本も。こういった基礎知識があり、顧客に最適な提案活動ができるので、どのような基礎知識を持たせるかの設計も重要になります。


おわり

サービス産業で同じようなお仕事をされている方、仲良くしましょう。

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