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五月の星々、ふりかえり|140字小説

140字小説コンテスト「月々の星々」
五月のお題は「歩」でした。

どうにか五作書き上げました。遅くなった原因は私生活のゴタゴタという名の子どものイヤイヤ期とかイヤイヤ期とかイヤイヤ期とか、あと遅寝です。寝てくれ。
まあ愚痴は置いておいて、ふりかえり!

no.1
世界中に足跡をつけてきます。そう言って旅立った後輩からはたまに絵葉書が届く。その歳で自分探しかと笑う上司に、憤るでもなくかろやかに彼女は去った。どこへ行くも行かぬも本当は自由なのだ。そう思うと、お守りをもらったように心が軽くなる。職場へ向かう一歩が高く響く。選んだ道を歩んでいる。

五月病の時期だな……と思って。
何処に行って何をしたって、そこでしか出会えない人、そこでしか得られない経験が有るものですよね。良くも悪くも。全部ひっくるめて人生にイエスと言いたい。

no.2
《ヒタヒタと背後から歩み寄るナニカ》が私の親友だった。ナニカはいつも側にいて、一緒に駆け遊び、私が公園で妙なおじさんに連れ去られそうになった時は力一杯地団駄を踏んで追い払ってくれた。私たちの約束事は「ふりむいてはいけない」。手紙を書いて背後に投げると、ナニカがトン、と返事をする。

そして突如始まる迷走。呟怖になりそうなのをどうにか軌道修正しました。最初は、ナニカがおじさんを始末する話だったり、振り向いちゃってバッドエンドな話でした。
なんかこう、キャラの立った物語を……とこねくり回しているうちに訳がわからなくなってしまった。

no.3
彼女が歩くと花が咲く。アスファルトの道でもお構いなく、その足跡からは小さな花が萌え出ずる。「かくれんぼは連戦連敗」明るく笑うが、「一人になりたくても居場所がバレちゃう」悲しいこともあるだろう。だから僕は時々、泣きたい色の花を摘む。花弁がつややかなうちはまだ大丈夫、と確かめながら。

シシガミ様みたいな少女と、見守る(つきまとう?)少年。「彼女が歩くと花が咲く」という冒頭だけが決まっていて、こねこねしてたらこんなんなりました。最初のフレーズから話をひねり出すパターン、よくある。
最初、「花弁がつやめいているうちは」だったのが、言葉の意味を調べてみたらイメージと違ったので「つややか」に直しました。日本語むずかし。

no.4
草原を歩く夢をたまにみる。果てなく茫々と風の吹きすさぶ草の海で、雲のうねる音を聴く。あてもないので蹲り、目を閉じて音に身を任せると、ザザザァと血流に似た音がして、草原と体の境が曖昧になる。もうこのままで良いかと心地よく眠りに落ち、そして無情に目が覚める。眼裏でまだ風が吹いている。

これは……イメージが先行してしまってうまく表現できなかったなぁ。覚めなくてもいいと思える夢、たびたびおとずれる同じ風景の夢、ずっとここにいたいと思えてしまう夢、の話。

no.5
怪獣はためらっているようだった。その一歩が、街の平和を壊してしまうと知っているかのように。波打ち際に佇む姿が可哀想で、僕は怪獣の足に触れてみた。まだ夜明け前だから、今ならだれにも知られずに戻れるよ。念が通じたのかオォンと鳴いて、怪獣は海に戻っていった。だから僕も、今日は家に帰る。

『怪獣』という響きにはどことなく、夕暮れのテーマパークのような寂しいイメージがあります。
結びが決まらなくて何度も書き直しました。家に帰るか海へ行くか。今回は帰ることにしました。
怪獣モチーフの話はなんだか書いてて楽しいなぁ。また書きたい。



以上、ふりかえりでした。

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