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星と屑鉄|140字連作掌編|3
#ノベルちゃん三題 のお題で綴る140字連作掌編。
星屑と恋と、確定したお別れまでのお話。
1話-/31話-
「プロポーズみたいですね」「そうだよって言ったら受けてくれる?」先輩が微笑む。冗談のようには聞こえないが、真意が見えない。「いいと思わない?結婚して、群馬の温泉のそばとか…どこか静かなところで…いつか庭付きの家なんて建てちゃって、子どもも…香川くんの子なら、きっと良い子だよね…」 https://t.co/r0Yub37341
— 石森みさお (@330_ishimori) April 23, 2022
返答に窮した俺と先輩の間に沈黙が落ちる。いつの間にかニュースは終わり、内容は懐メロ特集に切り替わっていた。花水木の名を冠した、ゼロ年代の流行歌が流れてくる。腸が煮えくり返るような怒りも、胸を容赦なく連打する悲痛も飲み込んで、どうかしあわせに、と祈る歌。優しい願いごとが切なく響く。 https://t.co/da588ZoPDX
— 石森みさお (@330_ishimori) April 24, 2022
「地球に降りたら、温泉入って、屋台でおでん食べて、散歩して、約束してたお花見も…」幸福なはずの未来地図を悲しげに広げる先輩を、俺は感情の整理がつかないまま見つめることしかできなかった。「…ごめん、忘れて」立ち去る先輩に何か返事をしていたら、道筋は変わっていたのだろうかと今も思う。 https://t.co/0nJqmfH54h
— 石森みさお (@330_ishimori) April 30, 2022
故人が主役の宇宙葬――そんな謳い文句に騙されたと老夫婦が語る。衛星ニュースの画面は時折ノイズがちらつき、どうか息子の遺骨を返してほしいと啜り泣く声を歪ませた。宗教団体《宇宙の民》と繋がっていたその業者は、偽装した兵器研究所の可能性があるという。俺は何故か、画面から目を離せずにいた。 https://t.co/IdCdgHslNx
— 石森みさお (@330_ishimori) May 1, 2022
粉砕した遺骨や圧縮した遺品を、南無阿弥陀仏やら南無妙法蓮華経やら適当な念仏を唱えて宇宙に放つ。文字通り、放ったらかす。杜撰な処理だが依頼者には分からない。悲しむ人に寄り添い心を開かせた後、団体へ勧誘するという手口だったらしい。悪質な詐欺だ、善人面した盗賊だとコメンテーターが罵る。 https://t.co/TLkSLmLpba
— 石森みさお (@330_ishimori) May 3, 2022
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