「三国志」吉川三国志 を読んだ感想

「三国志」 吉川 英治(著者)

 約70年前の作品なので、言いまわしが古くさく、読むのに少し苦労したが、国と国、武将と武将の熱い戦いのくだりは吸い込まれるような面白さだった。そして学べることが多かった。三国志を読んで感じたことはたくさんあるが、大きなものを採り上げるとしたら二つある。

 一つ目は、盛者必衰はやはり自然の摂理だということ、さらに大き目で見れば人生とはいつかは終わりがくるということだ。特に自身を過剰に評価し、贅沢の限りをつくしている場合はその終末のスピードを加速させるのであろう。

 三国志の中では董卓トウタク袁術エンジュツなどは典型的なそれであるし、長期的な目で見れば曹家一族も、ギゴショクの三国も終わりの時を迎えている。この摂理は例えば大きな一族企業が二、三代目でボロボロになることが多いことから、現代社会でも不変のものなのだろう。たしか平家物語の序文にあった文章を思い出された。

「 祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。 娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。 おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。 たけき者もつひには滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ 」

 二つ目は、大きな成功を収める者は自分の確かな軸を持ち、他人の甘言や目先の贅沢に惑わされないということだ。曹操ソウソウは大きな野望を胸に一衛兵から強大な魏を築いて国王にまでなり、劉備リュウ ビ藁沓ワラグツ編みから、中国大陸を安定させるという希望を胸に蜀の国王にまでなることができた。現代でも伝説の経営者や研究者、平和活動家など成功を収めた者、世界を大きく変えた者はおしなべて強い意志や軸を持っていることから、これもまだある意味いつの時代も不変な自然の摂理のようなものなのかもしれない。

 三国志ファンの間では、おそらくお決まりの「どの武将、智将が一番好きか」今風に言えば「推し」は誰かというトークテーマがあると思う。

 僕はやはり物語の主観側となりがちな蜀の武将たち、張飛チョウ ヒ関羽カン ウ諸葛亮孔明ショカツリョウコウメイなどにやはり愛着を感じてしまうことが多いが、中でも一番の「推し」は趙雲チョウウンである。劉備リュウビへの忠誠心が人一倍強く、贅沢に目が眩むこともない。欲するのは戦での武功のみ。智力もあり、作戦に忠実で、基本的に間違った判断をしない。そして何よりめちゃくちゃ強い。趙雲が出向いていったときの安心感は半端じゃないレベルである。どれだけカッコよければ、どれだけ見せ場をつくれば気が済むんだと面と向かって言ってやりたい。

 語りたいことはまだまだいくらでもあるが、長くなるのでこのへんで終わりにする。三国志はまた何度も読み直したいと思える作品だった。


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