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小話

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#短編小説

林檎

林檎がごとりと音をたてて冷蔵庫から転がり落ちた。あ、とひとつ声をあげて、林檎を拾い上げる。
お湯がぼこぼこと沸いた。火を止めて、お茶を淹れる。
林檎にナイフを入れれば、給湯室一杯に、林檎の香りがひろがる。
そのまま、お茶と、切り分けた林檎を、給湯室から持ち出す。
誰もいない、昼の会議室では、嘘つきで約束破りのあの人が待っている。

「今日の林檎は一段と綺麗だね」
皮付きのまま、八つに切り分けられた

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