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いちごサンドを食べたら淋しくなった

家の近所に「フルーツサンド」のおいしいお店があるらしい。先日美容院でそんな会話をして以来、口の中がフルーツサンドになっていた。

テレワークの日のランチにいいかも。今度行ってみよう。
そう決めて迎えたテレワークの日。
昼どきは並ぶそうなので、早めの時間に休憩を入れ、楽しみに向かったところ、運良く入れた。

お目当ては「あまおうサンド」。

白くてやわらかい食パンに、生クリームと大粒のあまおう。
クリームとパン生地の間には、見た目には分からないがうっすらとあんこが塗ってある。

美しいビジュアルを崩すのはもったいない気がしたが、彼らは食べられるのが仕事。
早速手に取った一切れは、柔らかくてしっとりしていた。

端からひと口かじると反対側から生クリームがあふれだしそうになり、慎重に少しずつ食べ進める。
どうやら真ん中から食べるのがよいらしい。
コツらしきものを発見した。

甘さ控えめのクリームと、ごろっと大きめのイチゴの酸味。
あんこの落ち着いた甘さが後からじわじわ沁みてきて、全体が締まる。

このフルーツサンドの完成度を支える影のMVPはあんこなのではないか。目立たないながらもいい仕事をしている、そんな気がした。

おいしいサンドとコーヒー。
交互に口に含み、幸せな時間をかみしめる。

でもなぜか、だんだん淋しい気持ちが湧いてきた。
おいしくて美しいものを食べているのに、なぜか
落ち着かなくなってきたのだ。

イチゴの赤と、白いパンとクリームのコントラスト。美しい色彩を眺めながら、その理由が何となく分かった気がした。

これは一人で黙々と食べるより、誰かとキャッキャ言いながら食べるのが似合うんだ。
写真を撮ったり、分け合ったりしながら。

ひとりで食べるにはカラフルすぎて、一緒に味わう人の不在を感じてしまう。
それも含めてフルーツサンドの魅力なのだろう。

今はなかなか難しいご時世だけれど、そのうち誰かを誘ってこのおいしさを共に味わいたい。
そんな日が遠くないうちに来ますように。




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