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テイクアウトで日本は救えない。けれど…

 note投稿の2回目。この1ヶ月強私が取り組んでいるテイクアウトサイトプロジェクトについて、やることを優先しすぎてしまいなかなかまとめられていなかった想いや仕組みを書きます。


 まずは、本日5月14日時点でTAKE OUTシリーズが34地域版(近日オープン含む)にもなり、月間(換算)アクセス合計数が40万にもなりました! このあたりの詳細は以下プレスリリースをご覧ください。

一ヶ月前にはここまでになるとはさすがに予想していなかったので、驚いています。


 そして、本日それらの総まとめであり、各地のテイクアウト情報まとめサイトなどをまとめたポータルサイト『TAKE OUT にっぽん』をオープンしました!

もう一度言います、まとめをまとめました(笑) 各地域の色々な方々が頑張って集めている情報に、都道府県・市区町別に検索してここからアクセスしていけます。

 決して私たちが手がけたTAKE OUTシリーズだけでなく、全国各地で同時多発的に「地元のテイクアウト・デリバリー店舗情報をまとめよう!」という動きが広がったのでそれらを何でも載せられるようにしました。私たちのTAKE OUTサイトは月40万アクセスというパワーがあるので、ここからリンクされるサイトはSEO的にもそれなりに効果あるはずです。


 思い起こせば4月1日、私の仲の良い居酒屋経営者が以下のFacebook投稿をしていて、これが全てのきっかけでした。

FireShot Capture 077 - (1) ゆう まるこめ - www.facebook.com

5月14日現在となってはこれが当たり前の投稿に見えるかもしれませんが、4月1日当時、福井県内では感染者が少しずつ増えてきてはいたもののまだ県としての自粛要請などは出る前、国としても緊急事態宣言が出る前です。私はこの投稿に衝撃を覚えました。

 それは一つには、店内飲食のみにしなければいけないほどの危機が迫っているのかという驚きと、もう一つには

「これで本当に経営は大丈夫なのだろうか…」

という心配からでした。

 その少し前から、この全国・世界の危機的な状況に対して自分がなにかできないかと考えてみてはいたものの、具体的イメージはわからない状況でした。その中でこの投稿を見て、またこれからこのような状況がどんどん拡大することも予想される中で、自分が持っている経験・スキルとこの状況をかけ合わせて出てくる解が一つだけわかりました。

「こういったテイクアウト店舗の情報を、蓄積・検索できるプラットフォームサイトをつくろう。鯖江から、求められるなら全国まで。」


 そこから私の普段からのWEB事業のパートナーであるWEBデザイナーとすぐに話をして、企画・設計を約1週間で完了してオープンさせたのが『TAKE OUT さばえ』でした。

正直、これが本当に世の中に求められているものなのかオープンするまでわかりませんでしたが、開始時点で約30店舗掲載、そして初日から2000アクセスにもなり、すぐに店舗から

「テイクアウトさばえ見たってお客さんから注文あったよ!」

というお声を複数いただき、

「あ、これ求められてる」

と思いました。さらに他地域にも同じプラットフォームを無料で増産・提供することをSNSで投稿すると、各地から

「うちの地域版を用意してほしい」

という連絡が来て、そこからGWまでは鯖江の店舗増加対応と各地域版の量産で記憶が飛ぶような怒涛の日々でした。続々とリリースさせる各地域版も軒並み初日から数百以上のアクセスとなり、今に至りました。各地と連携しながらのプロジェクトは非常に大変だけれどやりがいがありました。


 そんな私たちのテイクアウトプロジェクト、どこまで地域にとって意味のあるものだったのか、取り組みの地域経済への効果や意義について考えてみます。自分がやってきたことは一体なんだったのかを振り返るためであり、ここに考え方をまとめておくことが誰かの何かの役に立つかもしれないという想いで。

 まずこのテイクアウトサイトはどんなものかというと、以下の通り。

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はい、至ってシンプル、普通、ほぼ食べ◯グとかぐ◯なびみたいなものですね。要は情報ポータルサイトなわけですね。誰でも考えつきそうですね。これをなんのためにやってきたかというと、

テイクアウト需要拡大により、新型コロナ感染拡大リスクを減らしながら、少しでも地域経済をまわすため

です。

 前提として、政策として飲食店に明確に休業指示が出てその分の粗利補償などがしっかりあったなら、またはコロナがそもそもなかったなら、こんなものはなくても良かったのです。しかし残念ながら現実はそうではありませんでした。特に大手チェーンの直営などは休業しても企業体力的になんとかなるかもしれませんが、地域の個人店にはかなり厳しい状況となりました。全国各地の飲食店が不十分な補償の中で生き残るためにどこかで、つまりテイクアウトなどで売上をつくるしかない状況になってしまったのです。

 これは地域経済のためにも非常に重要なことです。補償が不十分である以上、今できる手段で少しでも経済をまわさないと後々の地域へのダメージは計り知れないし、近所の飲食店がほぼチェーン店のみという未来、嫌じゃないですか? 今できるテイクアウトで、消えたわけではない外食需要を代替してどうにか少しでも消費を維持してもらうかが大切なわけです。

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 これはお店のためだけでなく、家庭にも幸せをもたらします。外に出られなくなってストレスのかかりがちな家族や、特に炊事をするお母さんなどには嬉しい選択肢となります。


 しかし短縮営業や店内飲食の自粛が叫ばれる中で、今までやっていなかったテイクアウトで売上をあげるのは簡単なことではありません。何より、人々が地域のテイクアウトをやっているお店をどのように探すのか。テイクアウト情報の『見える化』と『魅力化』、情報の『蓄積』と『発信』がポイントです。

 これには様々な手段がありますが、オンラインで情報の蓄積性と検索性に優れたWEBサイト(ポータルサイト)という手段は、SNSによる発信などよりノウハウ・技術・費用を必要として効果的な実施へのハードルが高いものとなります。

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だからこそ、私たちは自分の今までの経験(私自身は新卒で日本最大級の不動産情報ポータルサイト「HOME'S」を運営するLIFULL(ライフル)で働き、今は独立して企業のWEBサイトなどを手がけています)が活かせるということもあり、他の方々が取り組むのが大変であろうという予想もあり、ここに取り組みました。

 それと、今回各地でクラウドファンディングなどの手段でお食事前売り券購入を募って飲食店にキャッシュを回すという動きもかなりありますが、これはこれで素晴らしいことだと思う一方で、少しだけ心配なのは「決済手数料が数%~20%くらいとられる」ということと、「需要の先食い」となってしまうことです。後者については飲食店が再開した後に、事前購入されたチケットが一気にたくさん利用されると、後々キャッシュが苦しくなる可能性があるので、そこだけ念頭に置いた方が良いかなと。その点テイクアウトの促進は「現在の飲食需要」をちゃんとお金に換えてもらうことなので、後にも安心かとは思いました。


 そしてもう2つ私たちが取り組む上で大事にしたポイントがあり、それはあえて

狭域(市町単位)のローカルプラットフォームに特化した

ということと、

各地のサイト運営を私たちが自分たちで変にやろうとせずその地域にまるっと渡した

ということです。

あ、ちなみに全部無償です(笑)

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WEBの特性から言えば、例えば食べ◯グのような全国版のプラットフォーム(テイクアウト飲食検索サイト)、そうでなくてもせめて県全体のプラットフォームをつくり自分たちで運営することは簡単にできます。しかしなぜそうしなかったかというと、このまとめサイトは

「誰がどのように運営すると地域にとっての価値が最大化するか、誰がどのように使いたいものか」

ということを真剣に考えたからです。狭域特化の意味をまとめると以下です。

① 短期で私たちでなく地元有志が自分たちで動き密度の濃い地域店舗情報を集められる(広く薄い情報にならない)
② 地域の店舗を使うのは地域の人たち、つまりその地域の情報だけがあれば良い
③ 地元行政やメディアなどの協力を得やすい

そして狭域ローカルプラットフォームではあるものの、シンプルで汎用性のある構造・デザインにすることで他地域版を増産する労力・費用を最小化するようにしました。

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 こうしてローカルでグルグルと濃い循環をつくれるプラットフォームを順々に量産して各地域に渡していった結果、私たちの限られた人員(実質2.5人)でも全国35の地域にまで拡がり、よくある「作っただけで全然使われないサイト、情報が薄く鮮度も低いサイト」とならずかなりヘビーに利用されるサイトにすることができました。

 ちなみに、単純な計算でこのプロジェクトによる経済効果を推計してみると

月間アクセス40万 ✕ テイクアウト購入想定割合50% ✕ 購入想定単価2000円

= 400,000,000円(4億円)/月

という数字が出せたりします。億単位の効果を生み出せて(※あくまで推計)嬉しさもある反面、日本全体のGDP(約500兆円)にかすりもしないところには歯がゆさを感じます。


 それともちろん、これらは全て各地域に

「このような状況から地元飲食店を守りたい!」

という熱い想いを持ってくれる同志がいたからこそ起きたことだということは、忘れず書いておきます。日本の各地方には素晴らしい方々がたくさんいるということを心底実感できました。本当にみなさんありがとうございます!



 最後に、2011年、東日本大震災のときに私は大学2年生で、日本を襲った未曾有の大災害に対して当時京都にいたちっぽけな自分が何も大きなことをすることはできず、ただ日常の笑顔を少しだけ生み出す学生活動くらいしかできずに歯がゆさ・悔しさ・無力感を痛烈に感じたことを強く覚えています。

 そこから約10年という月日が経ち、東日本大震災を経済面では圧倒的に上回る規模の今回の災害を迎え、テイクアウトサイトのプロジェクトを通じてあの時よりは少しは何かできているかな…という気持ちもゼロではないものの、気持ちの大部分を占めるのは東日本大震災の時と同じ歯がゆさ・悔しさ・無力感です。テイクアウトの情報まとめサイトという狭い手段で救えている人たちは限られていて、他の業種のお店や失業者、休業者、生活困難者、自殺者、コロナ感染者などに対して、何もできていません。私の一声が政治を動かせるわけでもありません。

残念ながら、所詮、テイクアウトで日本は救えないのです。

 しかし、ちっぽけでもやらなければ何も生み出せないし、言い始めなければ未来は変わらない。だから何か言い始め、やるしかないのだと思います。それが私の場合はたまたま知り合いの経営者の投稿と自分の経験からテイクアウトのサイトであっただけ。私たち一人ひとりが、少しでも自分のやれることを。それがたった一人をちょっとだけ救うことだってあるかもしれない。小さなことでもみんながやれば意外と大きなものにもなる。そしてそれが、また次に大変なことが起きたときに今度はもう少しだけ大きなことをするための土台になるかもしれない。

 5月14日現在時点で、日本としては徐々に各種制限の緩和に向かっていますがまだまだ新型コロナによる影響はあらゆるところに爪痕を長い間残していくと思います。この長い戦いの中で、まだまだ地域社会・経済のためにできることを考え、実行し続けていこうと思います。そしてまた10年後かいつの日にかやってくるかもしれないさらなる大きな災害に対して、その時には自分はどんな立場で何をやれるだろうか。

やろう、ちっぽけなことでも、一つ一つ。



<SPECIAL THANKS>

 このプロジェクト、TAKE OUTシリーズの全サイトを2人3脚で(しかも共同ボランティア戦線で)ここまでつくってくれたWEBデザイナーの千秋佑真さんには心の底からの感謝を記しておきたいと思います。この記事に書いたことは全て、彼なしでは全く形にならなかったでしょう。ありがとう、これからもよろしく。


<リリースしたテイクアウト全サイト>※5/14現在




<関連URL>

株式会社わどう



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