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ホテルで味わうバーボンのロックアイスは丸かった: 元教授、定年退職 113日目

昨日は、かつての研究室の後輩たちが退職記念のお祝いを開いてくれました。彼らは2〜4年後輩ですので、すでに還暦を迎えていましたが、東京から泊まりがけで駆けつけてくれた人たちもいて、懐かしく嬉しいメンバーでした。さらに、ドイツ駐在の後輩も途中からZoomで参加し、元気な顔を見せてくれました(便利な時代になりましたね)。


一次会は、大阪駅前のヒルトンプラザ・ウエスト内にあるおしゃれな和食ダイニングで行われました。気楽な雰囲気だろうと、私は先日紹介したアロハシャツで出かけてしまったのですが、ネクタイやジャケットの人もおり、少し浮いていました。それでも、とても楽しい時間を過ごしたので良しとしましょう。

ヒルトンプラザ・ウエスト入り口(注1)


盛り上がった一次会の後、二次会は静かな場所でゆっくり話したいとの希望もあり、急遽リッツカールトン大阪に席を取りました。孫の世話で遅れてきた後輩も加わりました(まあ、皆さん大変です)。リッツカールトンといえば、大阪でもトップクラスの高級ホテルなので(下写真)、ホテルのメインバーでは周囲に迷惑をかけないよう気を配りました。

ザ・リッツ・カールトン大阪(注2)

私自身、約5年ぶりのリッツカールトン訪問でした。メインバーに到着すると、ピアノの生演奏が流れ、海外からのお客様や正装の方々、結婚式帰りのグループなどがおられました。誕生日を迎えたお客様にはピアノのハッピバースデー生演奏と拍手が送られており、リッツらしい雰囲気でした。

ザ・リッツ・カールトン大阪内、ザ・バー(注2)

久しぶりのホテルメインバーでの二次会ということで、私はお気に入りのバーボン「ワイルドターキー」をロックで注文しました。すると、さすがリッツ、グラスにちょうど収まる透明で大きな丸い氷が入っていました(タイトル写真:注2)。この光景を見て、昔ある講演でこの話をしたことを思い出しました。

その講演は大学新入生のオリエンテーションで行ったものでした。学生たちに科学的に考える力を身につけて欲しいという趣旨で、「日頃から身の回りのことを注視し、それを科学的に考察する習慣をつけて下さい」と伝え、「これは訓練でどんどん上達しますし、そうすると自然に科学的な『直観力』がつきます」と付け加えました。


そのひとつの例として、問題を出しました。「高級なバーでお酒をロックで注文すると、グラスが2つ出てきます。ひとつはチェイサーで水が入っており、もうひとつはウィスキーで、その中には透明で、大きくて丸い氷が一つ入っています。なぜだと思いますか?」と新入生に問いかけました。少し前まで高校生だった彼らには未知の領域でしょう。しかし、科学的な思考を働かせれば、答えにたどり着くはずです。

私は、ヒントとして「お客さんはお酒をなるべく薄めたくない」と伝えました。すると学生達からは、まずは「作りやすい」「美味しく感じる」「見た目が良い(高級感)」などの答えが帰って来ましたが(ちなみに、「作りやすい」という答えには、「バーテンダーさんがアイスピックを使って丸氷を作るのは大変です」と説明しました)、最後には正解にたどり着きました。

正解は、高校の数学でも習う通り、同じ体積の中では球体が最も表面積が小さいという点です。そのため丸い氷は溶けるスピードが遅く、ウイスキーが薄まりにくいのです。また、氷は尖った部分から溶け始めるため、球体ではさらに遅くなります。だからこそ、高級バーでは丸い氷が使われ、お客様はゆっくりとお酒を楽しめます。


さらなる質問としては「では、家で作る氷は不透明なのに、どうやって透明な氷を作ると思いますか? これは化学の問題です」。答えは、水に含まれる空気やカルキなどの不純物が結晶化を不均一にするためで、それらを取り除き(一度沸騰させた水を使うなど)、ゆっくりと凍らせることで透明な氷を作ることができます、という説明です。


「このように身の回りの現象を科学的に観る訓練を積んでください。それも出来れば楽しみながら・・・」と新入生達にエールを送りました。あの日の学生たちも今では卒業して社会へと旅立っていきました。有意義な大学生活を送った彼らが、これから社会で活躍していって欲しいと願っています。では、また。

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注1:ヒルトンプラザ・ウエストのホームページより
注2:ザ・リッツ・カールトン大阪のホームページより


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