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おすすめの曲㉓:モーツァルト「ディヴェルティメントK.439b」

 モーツァルトには「ディヴェルティメント」という曲名の音楽がたくさんありますが、このK.(ケッヘル)439bというのはおもしろいです。3本のバセットホルンのために書かれた5曲のディヴェルティメントなのですが、これが、木管楽器の初心者の室内楽の定番なのです。しかも、ダサい曲ではないですよ。モーツァルトらしい明るさや楽しさ、くつろぎを感じさせる珠玉の名曲でありまして、これが木管関係者にしか知られていないとしたらもったいない!と思って紹介するわけです。またしてもYouTubeにリンクがはれない情けなさですが、ちょっと聴いてみてください。とくにモーツァルトの好きなかたには好んでいただけると信じます。

 現代の楽器でやる場合は、クラリネット2、ファゴットでやるか、オーボエ、クラリネット、ファゴット(つまり木管三重奏)でやるか、まれにクラリネット2、バスクラリネットでやるか、ではないかと思います。第3番の出だしは、まるで「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」のようですが、まあ同じ人が作りましたから…。この出だしが、練習室から聞こえてくる場合は、ほんとうにみんながんばって練習しているのだな!という感じがすごくします。私の楽器はフルートですが、この第2番をニ長調にして、上のパートをフルート、第2のパートをピアノの右手、下のパートをピアノの左手にしてある楽譜でレッスンを受けたことがあります(バッハのトリオ・ソナタをフルートとピアノでやったときみたいですね)。なかなか本格的なモーツァルトで、よろしいです。しかも、技術的には初歩でいけるし。音楽的には深いし。ほんとうにいい曲です。

 5曲ぜんぶを聴くと、いま私の手元にあるベルケシュ、高嶋友子(クラリネット)、岡崎耕治(ファゴット)によるCDが、74分。「そんな長いものを聴かねばならないのか!」と思わなくてだいじょうぶです。1曲、聴くだけでいいですし、もっと言えば、1楽章単位から楽しめる音楽です(後述)。気楽にお楽しみください。

 モーツァルトに「ウィーン・ソナチネ(ウィーンのソナチネ)」と言われる6曲のピアノ曲があります。これがじつにふしぎなことに、上記の木管のためのディヴェルティメントk.439bを、楽章単位で分割して並べ替えたのではないかという曲集なのです。もちろん調も変えてあります。(私は一度、両者の楽譜をつぶさに比較して、ウィーン・ソナチネのあらゆる楽章は、k.439bと共通していることを見出しました。)ですから、これらの作品は、楽章ごとにバラバラにしても楽しめるくらいだし、ピアノのためのソナチネとしても楽しめるということなのです(ピアノ版も有名で、録音ありますよ。カツァリスの録音があるし)。ちなみに第1番の第4楽章は、ひところ、あるバラエティ番組の、調理をする場面で必ず流れていました。テレビ大好きっこの私の子どもに聞いても知らないというので、よほど前の話なのでしょう。でも、そのころを知っている人は、これを聴くと「あ!これ知っている!」と叫ぶのではないかと思われます。(ちなみに、その番組は、料理が出来上がったときはベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」の出だしを流していましたし、食べているときは、モーツァルトのホルン協奏曲第1番を流していました。)

 とにかく、知られざるモーツァルトの名曲なので、ぜひ親しんでいただきたいと思っております。以上です!

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