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世間に変わった位相が入っている

 (今回の記事は、やや数学の好きなかた向けだと思います。「数学は頭が痛い」とは思わないというかたはどうぞお読みください。)

 大学の数学科に行きますと、学部2年くらいで習う科目で「集合と位相」というものがあります。「位相(いそう)」というものは物理で習う位相とはまったく別物ですのでご注意ください。きょうの話は、世間で「普通でない」位相が入っていることに気づいたという記事です。

 「集合」という数学の概念は高校で習います。ものの集まりのことです。これでは説明になっていないということは誰しもわかっているのですが、こうとしか説明のしようのないものです。

 一方で、「位相」というものは、厳密な議論を始めると際限なく細かい話になっていきますので、思い切ってはしょりますと、「集合に、『近い、遠い』の概念の入ったもの」という感じになります。たとえば、実数全体の集合、と言った場合には、集合ですから、これは実数がただ集まっているだけに過ぎません。しかし、ここに「普通の」位相が入りますと、実数全体が位相空間になります。「普通の位相」と言ってもわれわれがごく自然に、無意識的に思っている「近い、遠い」です。たとえば、3つの実数1、2、100を考えますね。「1と2」よりも、「1と100」のほうが「遠い」と感じませんか?それが「位相」が入った状態です。ただ集まっているだけなら、「近い」も「遠い」もありませんからね。

 実数に「開集合」を定めますと位相が入ります。開集合の決め方としては「あらゆる部分集合を開集合とする」という極端なものがあり(これを離散位相と言います)、その反対の極端として「空集合と全体集合しか開集合として認めない」というものがあります(これを自明な位相と言います)。さっき私が「普通の位相」と言ったものは、実数に入れるなら「いわゆる開区間を開集合と定める」ものです。なんだか当たり前なことを言ってすみません。ここで開区間と呼んだものは「2<x<3」みたいなものです。普通(2,3)と書きます。これ、座標じゃないですよ(笑)。2より大、3より小の実数のことです。これでごく普通の位相が入ります。2次元の平面でも3次元の空間でも同様です。(高校数学的用語と入り乱れていてごめんなさいね。)

 きょう言いたい話はこれじゃないんですよね。世間に入っている位相です。

 世間にも「近い、遠い」の概念がありますよね。「東京と大阪」よりも「東京と福岡」のほうが遠いです。当たり前ではないかと言われますが、当たり前なことから始めるのが数学です。この世間で入っている「普通の位相」とは違う位相が入っていることに気づいた、というものです。それはインターネットです。私はA市に住んでおり、A市から遠く離れたC市にあるC教会のオンライン礼拝をよく見ています(コロナ禍以降、オンライン礼拝が日常化しました)。いっぽうで私のこのブログは、同じマンションのすぐ上の階の人も下の階の人もまったく知りません。ですからインターネットの世界ではここからマンションのすぐ上や下よりもC市のC教会のほうがずっと近い!かなり変わった位相が入っている!

 これは、インターネットで商売などをするときに気をつけねばなりません。多くの店は、オープンすると客が入るものです。私の近所にもセブンイレブンが開店したときは多くの客が入ったものです。しかし、それは物理的な距離が近い(普通の位相が入っている)近所の人の目に入って、お客がたくさん来たわけです。インターネットではこういうわけにはいきません。どういうふうにしたら検索でかかるのか、どういう人が見るのか。なかなかわかりません。おそらくこの「インターネットの位相」に詳しい人っているのでしょうが、私にはわからないことです。どうも物理的距離が大きい人と簡単につながれるというほうばかりに気がいきますが、逆に、思想的に一致しない人との距離は非常に大きいのが「インターネットの位相」の特徴でしょう(ごめんなさいね、距離空間は位相空間だけど位相空間がすべて距離空間ではぜんぜんないな、オレは自分で「位相」という言葉を出しながら、まったく厳密でないことを書いているな…という自覚はあるのですが、おゆるしを)。この「世間に入っているかなり変わった位相」について、詳しく解明できれば、社会に大きく貢献できるような気がするのですが、残念ながら私にはその才能がありません。でも「位相の違い」であることには気づきました。どなたかこれについて研究してください。

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