見出し画像

ベッチ数と輪廻転生

 (この算数・数学の記事には、小学1年生なら理解できることを書きます。しかし、ほんとうは大学の数学科の幾何の学生が学部3年くらいで習うことです。でも、よろしければお読みくださいね。)

 以下のクイズは前にも出しましたが、再掲しますね。なんの数を表しているでしょう。

 3000=3
 8888=8
 5678=3
 1212=0
  100=2
    1=0
    0=1

 これ、小学1年生ならわかるのですよ。わかりますか?

 答えを書いていいですか?

 答えを書きますよ?

 窓の数です!

 穴の数です!

 つまり、「0」には窓がひとつあります。「8」や「B」や「日」には窓が2つあります。「1」や「2」にはひとつも窓がありません。そういうことです。これを「1-ベッチ数」と言います。k-ホモロジーのランクをk-ベッチ数と言います。このホモロジーというのが、数学科の幾何の学部生の3年くらいで習うことですので、きちんとした議論をしなければ厳密な話はできないわけです。ですから、以下に直感に頼った議論が続くことはおゆるしいただきたいと思います。しかし、難しいことを言わなければ、少なくとも1-ベッチ数は見た目で明らかではないかと思います。

 では、0-ベッチ数はと言いますと、これは「つながっている部分の数」です。たとえば「3000」の0-ベッチ数は4で、「100」の0-ベッチ数は3で、「5」の0-ベッチ数は1です。それだけです。私の説明がへたでうまく伝わりませんでしたら、スルーして先へお進みください。

 では、2-ベッチ数とはなにかと言いますと、「お部屋の数」です。たとえば、球面の2-ベッチ数は1です。(球面には窓がありませんので、球面の1-ベッチ数は0ですね。)心臓の2-ベッチ数は2でしょうか。心臓には2つの部屋がありますので。もしかして心臓の2-ベッチ数は4ですか?心臓の詳しいことはわかりませんが…。

 それで、3-ベッチ数はなにかを考えますと、これは想像を絶すると思います。いまわれわれは3次元空間に住んでいますので。この空間が4次元の空間でどれだけの「4次元お部屋」があるのかはわかりません。いや、正確なことを言うと、つぎの通りです。べつに、このわれわれの住む3次元空間が、4次元空間に「埋め込まれて」いなくてもいいのです。それとベッチ数は関係ありません。たとえば、1-ベッチ数にしても、ほんとうは「窓の数」ではないのです。われわれが1次元の空間に住む「点」だったとしましょう。その世界が、果たして「窓がいくつあるか」がその「点」であるわれわれにわかるでしょうか?つまり、ベッチ数(ホモロジー)は、その空間そのもので決まるのでありまして、どの次元の空間に「埋め込まれて」いるか(「埋め込む」もほんとうは専門用語なのです。ごめんなさい)というのは関係ないのです。さきほどの「3000=3」みたいなのがすぐにわかるのは、1次元の空間である「0」をこのように2次元の紙に書き、さらにそれを3次元に住むわれわれが読んでいるからです。だからものすごく当たり前に感じられるのです。その空間に住んでいる人にはなかなかわかりません。したがってほんとうは厳密な議論がいるのです。ごめんなさいね、小学1年生でもわかることでありながら、じつはホモロジーやコホモロジーが非常に専門的な概念であるのは、そのような事情によります。

 少しだけ「なかにいるとわからない」ことを、1-ベッチ数で実感していただきますね。私たちの世界で、「時間(時刻)」というものは、1つの実数で表されます。たとえば西暦2001年1月1日の深夜0時を0秒としますと、その時点から何秒経過したかで、本日2022年2月21日の15時28分は定められます。それよりも前の時間(時刻)であれば、マイナスの数で表されます。あまり難しいことを言わなければ、それで時間は定められます。これは1次元です。これに伴って「講演」のようなものも内容は1次元になります。この文章も、1次元にせざるを得ません。「点と点を結んで線になる」とか「線と線のあいだで面になる」といったたとえがよく使われますが、それでも、講演の原稿にするとき、あるいはこのいま私が書いている記事にしましても、1次元にせざるを得ないわけです。時間が1次元だからです。以下は余談です。「面と面のあいだで体になる」という言いかたをほとんどしないのは、われわれの脳が、あまり3次元的にはできていない証拠だと思います。われわれはあまり3次元的な発想をしていないことは、日常的にいろいろ例を挙げることができます。引っ越しのとき、棚にある食器を並べてみたら、予想以上にたくさん入っていた!という経験は多くの人がなさるのではないでしょうか。余談の余談です。「体」と言っても「実数体」の「体」ではないですよ!当たり前ですけど。余談の余談おわり。余談おわり。

 というわけで、時間は1次元ですが、1次元の多様体は直線と円だけです(ミルナーの有名な本にその証明が載っていたと思います)。自分の人生が、何回も生まれ変わる、つまり輪廻転生するのか(仏教的)、それとも、1回こっきりで、生まれて生きて死んで復活して永遠の命なのか(キリスト教的)、どちらだか、結局、人間にはわからないではないですか。輪廻転生ならわれわれの人生は「円」であって、1-ベッチ数は1です。いっぽうで1回こっきりの人生なら、われわれの人生は「直線」であって、1-ベッチ数は0です。これがどちらだかわからない。さきほど、1-ベッチ数なら小学1年生でもわかると言いました。でも、時間という1次元の世界の中に住むわれわれには、それが円であるのか直線であるのかもわからないのです!「住んでいるとわからない」というのは、そういうことです。

 これでだいたいこの記事はおしまいなのですが、かなり理解し難くなってしまったかもしれません。それというのも、私の説明が悪いのでして、きちんとホモロジーを定義していないのに、こんな感覚に頼った説明をしているから、通じない話になったのです。ごめんなさいね。通じる人にしか通じない記事かもしれませんが、せっかく書いたし、公開しますね。ごめんなさいね。ここまでお読みくださり、ありがとうございました。

この記事が参加している募集

#算数がすき

1,101件

#数学がすき

2,946件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?