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子どもが初めてスタジアムに行ったときのこと

昨日、息子には「自分の選んだものが一番、それ以外は無理!」という考え方ではなく、親が与える世界にも付き合って、世界を広げてほしいと思ったことを書いた。

実は4年ほど前、同じような経験をしていた。

親が知っている世界でも、
子ども自身が体験していなければ、子どもは想像すらできない。
子どもは、それまで見てきたものの中から物事を判断する。
だから、子どもには
実際のものの大きさやスケールを体験させたほうがいい。

そんなことを思ったことがあったので、当時のことを振り返ってみたい。

エスコートキッズに当選した

4年前、息子が小学1年生だったころ。
新聞社のイベントで、Jリーグの試合のエスコートキッズの募集があった。我が家には3人の子どもがいるが、当時サッカーで遊ぶことの多かった息子には外の世界を見せてやるのもいいだろうと思いダメモトで応募したところ、見事当選したのである。
その試合は、ガンバ大阪-サガン鳥栖。吹田スタジアムでガンバ大阪の選手と手をつないでグラウンドに入場するというものだった。

当時、息子はまだチームには入っていなくて、サッカーは友だちとする遊びの1つだった。スタジアムにも足を運んだことはなかった。
でも、テレビ観戦はしていたし、サッカーに興味があることはわかっていたので、喜ぶだろうと思って息子に黙って応募したのである。

当選が決まって、いざ息子に知らせる。
「エスコートキッズというのに選ばれたよ!プロのサッカー選手と手をつないで、プロが実際に試合をするスタジアムに入れるんだよ!!」

息子が喜ぶかと思って話してみると、なんと彼は意外な反応をした。
「そんなのは、やりたくない。」

よく話を聞いてみると、自分はサッカーをしたいのであって、プロと手をつないで歩くだけなんて興味がないというのである。さらには、プロと一緒にサッカーができるのならいいが、そうでなければ意味がないとまで言った。
小学生がプロとプレイだなんて、ずいぶん大きなことを言ったと思う。まだ世界を知らないからこそ言えるんだ、とも思った。

プロとプレイできなくても、手をつないでグラウンドに足を踏み入れるだけでもめったにないチャンスなのに。YouTubeやネットの画像なども見せて、エスコートキッズも滅多に出来ないことなんだと伝えたが、彼は頑として聞かなかった。

結局当時小学4年生の長女が参加してみたいといったので、息子の名前で申し込んでいたところを変更、長女はこの時、倉田秋選手と手をつないだのである。

★★★

子ども達にとっては初めてのサッカー観戦だった。駅からの道で通りすがる人の服装にまず圧倒される。ユニフォームカラー?というか、みんな、ユニフォーム着ている!!!今思うと、そこですら我が家は押さえていなかった。

わたしは20代の頃に親と一緒にスタジアムでサッカー観戦をした覚えがあるが、その時は思い切り普段着で行っていた。その時の感覚でいたのだが、サッカー観戦、応援と言えばまず服装からか!!

せめてチームのカラーを身に付けなければ、と思ったけれど時すでに遅し。小学生女子の普段着姿の長女が、エスコートキッズの受付に行ったときの周りの子ども達は

「サッカー頑張っています!!命かけています!」

ぐらいのオーラを放って、チームカラーの青をどこかしら服に取り入れてた。
実際、エスコートする時にはユニフォームを貸してもらえたのであまり気にしなくてもいいのだろうけれど「とりあえず当選したからきました」感は出ていたんだろうと思う。

★★★

息子はというと、スタジアムが近づいたところでだんだん無口になっていた。普段練習しているサッカー場とはなんか雰囲気が違うし、何だこの人の数は??と思ったのに違いない。

そしていざスタジアムに入ると、長男はまぶしい照明と青一色に染まった人の群れに圧倒されたようだった。グラウンドも今まで見たことがないほど広いし、よく見えるのだけれど遠い。そして、場内アナウンス。当然ながら何もかもスケールが大きかった。選手の名前が呼ばれるたびに体中を貫くような歓声が上がる。
さらに、近くにいたガンバのファンの人は、とても熱く、優しかった。
こんな状況、息子にとっては初めてだった。
息子は言葉を失って、父ちゃんの服の裾をつかみ、呆然と立ち尽くしていた。

その後、長女と次女は試合に飽きてしまったので私が外に連れ出したのだが、夫と長男はサッカー観戦を満喫した。もう、2人は初めてのサッカー観戦だったが、とりこになったようだった。

今でも時々話すことがある。

「エスコートキッズ、やっておけばよかったでしょ。」

息子は自分からは言わないけれど、何かの時に誰かから声をかけられると静かにうなずく。

★★★

当然ではあるけれど、親が体験して知っているからと言って、子どもはその世界を知っているわけではない。そして、テレビや映像で何となく知っているように感じることでも、子どもは実際に体験してこそ腑に落ちるのだと思う。

それ以来、もう何度かサッカー観戦には行くようになった。
我が家から行けるスタジアムは一番近くても1時間半ほどかかる。でも、テレビで見るのとは違う感動がある。今では我が家には応援グッズもチームユニフォームもある。
ただ、コロナ禍でユニフォームの出番が減ってしまったけれど。

また早くスタジアムに足を運んで応援をしたい。


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