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『○○と○○』——エモなタイトルに魅入られる話

先日、QuizKnockの動画を見ていたら、出題されていたとあるクイズの問題にエモを刺激されました。

問題文「鉄道の信号機同士の恋模様を描いた作品を残した」

これは、宮沢賢治の『シグナルとシグナレス』のことでしょう。
題名の語感の美しさが私の心を捉えます。

言葉の美しさに刺激を受けて、いろいろ脳内をめぐっていたら、
「○○と○○」という名前、それだけでエモい説が浮上してきました。
二者の間にどんな物語が展開するのか、想像力を掻き立てられる題名なのです。

思えば、小さな頃から「○○と○○」という名前のもので、好きなものがけっこうある私。いくつか列挙してみました。

『シグナルとシグナレス』

前述のとおり宮沢賢治による童話で、鉄道の2本の信号機を「シグナル」と「シグナレス」という男女に見立てた恋のお話です。

宮沢賢治を読みあさっていた時期があり、そのときに出会いました。言葉も情景もとんでもなく美しくて、一瞬で大好きになったお話です。

「シグナレスさん、どうかまじめで聞いてください。僕あなたのためなら、次の十時の汽車が来る時腕を下げないで、じっとがんばり通してでも見せますよ」わずかばかりヒュウヒュウ言いっていた風が、この時ぴたりとやみました。

「あら、そんな事こといけませんわ」

「もちろんいけないですよ。汽車が来る時、腕を下げないでがんばるなんて、そんなことあなたのためにも僕のためにもならないから僕はやりはしませんよ。けれどもそんなことでもしようと言いうんです。僕あなたくらい大事なものは世界中ないんです。どうか僕を愛してください」

宮沢賢治『シグナルとシグナレス』より

ああ、狂おしいほどにエモ……っ!!!
後半の星空の描写も本当に綺麗なので、お暇なときにはぜひご一読ください。


『安寿と厨子王丸』

次に思い浮かんだのが、『安寿と厨子王丸』です。
子どもの頃、家にあった教育用のビデオアニメで擦り切れるほど見ました。昔話の童話にしては悲劇的すぎる姉と弟の物語です。このアニメーションの美しさも非常に印象的でございました。DVDになってないかな。
ちなみに森鷗外の『山椒大夫』は同じ説話から題材を取っているんですね。


『ナージャと竜王』

これも、子どもの頃に擦り切れるほど見たアニメビデオです。
いま調べて改めて知りましたが、ナージャは『封神演義』の哪吒のことなんですね。当時の作品名が『ナージャと竜王』でしたが、今のDVDでは『ナーザの大暴れ』という題名になっているらしいです。いや全くエモくないな。

中国で作られたアニメーション作品とのことですが、映像がとても美しくて、台詞が少なくて、まるで芸術作品のようなアニメでした。
YouTubeを検索すると動画が出てきますが、正規のものか海賊版か判別できませぬ。

『袈裟と盛遠』

こちらは芥川龍之介の短編。
遠藤盛遠と袈裟御前の不倫を題材にしたお話です。

「袈裟御前」という名前がもう美しいんですけれども、どうやら袈裟自身も絶世の美女という設定のようです。
物語は、盛遠の独白からなる前半と、袈裟の独白からなる後半、という構成も面白い。

もとの『源平盛衰記』にある話では、盛遠が袈裟の夫である渡辺渡を殺害しようとして、誤って袈裟御前を手にかけてしまった悲劇として描かれているようですが、芥川版では袈裟の独白が思いも寄らない狂気を描き出します。
いやあ、エモい。

忘れちゃいけないエモ、「キキとララ」

そんな感じで、やっぱり『○○と○○』はエモいわ! と満足したところで、忘れちゃいけないものを思い出しました。

子どもの頃、ごはん茶碗も、マイグラスも、リュックサックもすべて、お気に入りのコレでそろえていたじゃないか。文字通り、私にとってのスターだった双子のきょうだい星こと、リトルツインスターズ。

そう、「キキとララ」。
ああ可愛い、ああエモいっ。

という結論に至ったことをご報告して、結ばせていただきます。
どんとはれ。

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