ファッション

病院で見かけるお爺さんがいた。多分、おじいさんだろう。今時のレース感あふれるカーディガンを着たり、大きめの赤い花柄のミニスカートを履いていた。真っ赤なピンヒールに細い足はうらやましいくらい。髪は肩甲骨の下あたりまでの長さで、少し薄く少なくなっていたけれど、きれいにといであった。お髭は白髪まじりだったけど、いつもきれいにメイクをしていた。
その姿は、太るにまかせてゆるい服を着て、マスクをするから目元しかメイクをしないような、それもアイラインと眉を描くことしかしない私なんかが足元にも及ばないくらいに、きれいだと思った。

ここは精神科。私はむしろ今時のファッションを見習いたいと思っていたけれど、それを奇異の目で見ている人もいただろう。「精神科」という色眼鏡をかけて。

2、3年前から若い男の子がスカートを履くのが流行っている。長男が欲しいと言った時も、私は当然のように一緒に選んで楽しんだ。髪を伸ばして金髪にしたりしても、今しかできないからすれば良いと思ったし、お洒落な長男を密かに自慢に思った。

お爺さんも長男も、スカート履いたからって「女装したおかしな人」ではないと思う。好きなファッションを楽しんでるんだと思う。だって、髭が生えてても素敵だって思えたんだから。

「女装」が悪口のように言われてるけれど、似合えばいいんじゃない?好きな格好をして、生き生きできるならそれがいいと思う。むしろ太って着る服がなくなって、昔は髪の毛も編み上げたり、メイクも凝ってたのに下地もろくに塗らない私の方が、恥ずかしくなる。

私も、この太った自分を受け入れることができれば、渡辺直美さんやフワちゃんみたいに自分のスタイルを楽しむことができるだろう。私は人生初の肥満を経験している。肥満にはそれにあったファッションがきっとあるはず。太り始めてもう5年も経つから、そろそろセルフイメージを変えていかないと、あのお爺さんに会うたびに、憧れのような気持ちで見ているだけでは、前には進めないだろうし、服を着て楽しめない。

せっかく着るのだから、ちょっとは気持ちが上がる服が着たい。それが例え、人に「痛い格好」と思われたとしても。

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